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鉄道各社、基準値を軽視 「あくまで目安」不適切な輪軸1万本以上

産経ニュース / 2024年9月30日 21時26分

鉄道車両の車輪と車軸からなる「輪軸」の組み立て作業で基準を超える圧力をかけたものが多数見つかった問題で、国土交通省は30日、緊急点検結果を明らかにした。圧入力値が不適切な輪軸は判明分だけで計1万本以上。一部で記録改竄(かいざん)という不正にまで及んだ背景には「圧入力値はあくまで目安」(大手関係者)とする現場の認識がありそうだ。

「安全確保は最優先事項」

「安全確保は、全てに勝る最優先事項であることは今更改めて申し上げるまでもありません」

斉藤鉄夫国交相は30日、鉄道各社の安全責任者を集めた緊急会議で、こう口調を強めた。

発端は7月、新山口駅で起きたJR貨物の脱線事故だった。輪軸の組み立て作業の際、車輪に軸を押し込む圧入力の値が基準を超え、さらに記録を改竄していたことが調査で判明。各社一斉点検で、JR貨物は過去に輪軸1155本分で改竄し、JR東でも平成29年までの10年間に基準値を超えた4888本のうち延べ1187本で改竄するなど、5社で不正があった。

圧入力値に「振り回されたくない」

そもそも圧力基準とは何か。通常、軸と車輪をしっかり固定するため、圧入する部分の軸の直径は車輪の穴の直径よりわずかに大きい。この直径の差を「締(し)め代(しろ)」と呼ぶ。軸を穴にはめこむ際の圧力は締め代が大きいほど多く必要となる。

数値が大き過ぎれば車輪が負荷に耐え切れず損傷し、小さ過ぎれば固定されず車輪がずれる。そのため、車輪と軸の固定具合を確かめる尺度として圧入力値が使われる。

だが、圧入力値は締め代だけでなく、軸と車輪穴の金属表面の粗さや円の形、圧入の角度、潤滑剤の塗り方などの要素で変わる。JR東のグループ会社では基準値の上限を55%上回ったり、下限を48%下回ったりした事例もあった。法令基準はなく、各社は日本産業規格(JIS)を基に社内基準を設定している。

輪軸組み立てを担当したある大手関係者は「基準はあくまで目安。経験則では、圧入力値が1~2割超えても、締め代が適正なら安全性に問題はない」と打ち明ける。

国交省によると輪軸に原因がある事故はこれまで確認されていない。一部事業者は基準を逸脱しても車輪内部の超音波検査などで安全確認していたほか、使用中の定期検査でも安全は担保できると認識していたようだ。作業のやり直しには手間がかかる。JR貨物の聴取に対し、関与した社員は「こなすべき作業が多かった。部品が廃棄になることを恐れていた」と説明したという。(市岡豊大)

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