海保機長の「誤認」か 音声記録と一致しない証言も 羽田航空機衝突事故の経過報告
産経ニュース / 2024年12月25日 19時53分
運輸安全委員会が25日公表した羽田航空機衝突事故の経過報告では、海上保安庁機から回収したボイスレコーダーの内容が初めて公開された。ただ、事故原因の核心になり得る「滑走路への進入許可を得た」との認識について、海保機長(40)の証言と音声記録の内容が一致しない部分もあり、「誤認」の解明にはさらなる調査と分析が必要になる。
音声記録は衝突の22分前、地上走行を開始した時点から始まる。海保機は能登半島地震の支援物資を被災地に届ける任務だったが、出発予定時刻を大幅に過ぎていた。機長は乗員が任務を終えて羽田に戻った後の帰宅時間も考え、出発をなるべく急いだ。
機長と副操縦士双方誤認か
担当管制官から離陸順1番目を示す「ナンバーワン」の伝達とC滑走路手前の誘導路で待機するよう指示があったのは衝突2分前。機長は「被災地支援を優先してくれた」と思ったが、同時に「滑走路に入って待機せよ」の指示だったとも受け止めた。
副操縦士には管制官から滑走路への進入許可を得た後に行う離陸前点検を開始するよう指示。副操縦士からも指示への確認や指摘などはなく、2日午後5時46分ごろ、海保機は誘導路を超えて滑走路に入った。
機長は事故後の安全委の聞き取りに「進入許可」を表す管制用語を副操縦士と相互確認したと証言。だが、公開された音声記録にこのやりとりの記述はなく、機長と副操縦士双方が誤認していた可能性が高い。
「小型機いましたね」
進入後、機長らが所属する羽田航空基地の通信士から「小松(空港)での電源車借用の調整はつきそうにありません」と無線連絡が入った。機内では被災地での任務に関する会話が交わされ、同乗した通信員の笑い声も聞こえたが、23秒間の無音が続いた後、音声記録は終了した。
一方、担当管制官は海保機が指示通り誘導路を走行しているのを確認した後、C滑走路に着陸予定の日航機の動きに目を移した。衝突15秒前、空港周辺空域のレーダー監視を担当するターミナルの管制官からマイクスピーカーを通じて問い合わせがあった。「日航機はどうなっている?」。
ターミナル担当は監視モニター上で海保機が滑走路に進入しているのに気づいた。日航機が着陸をやり直していることを想定して確認を求めたが、担当管制官にはその意図が伝わっていなかった。
同47分ごろ、日航機が滑走路に接地した直後に海保機と衝突。滑走路を外れて約2千メートル先の草地で停止した。「止まったな」「小型機いましたね」。日航機のボイスレコーダーにはコックピット内の会話が残っていたが、衝突するまで滑走路上の海保機を認識していなかったことを示唆する内容だった。(白岩賢太)
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