羽田事故1年、なぜ最悪の事態免れたか 主脚無事で機体横転せず 乗客、乗員の指示に従う
産経ニュース / 2025年1月2日 18時45分
羽田空港で昨年1月、日本航空と海上保安庁の航空機が衝突した事故は、旅客機の乗員乗客379人が全員脱出に成功した。運輸安全委員会が昨年末に公表した経過報告は「安全設計の想定を大きく超える」事故だったと分析した。2日で事故発生から1年。なぜ旅客機の乗員乗客は全員脱出できたのか。背景を報告書から読み解く。
昨年1月の事故では日航機は滑走路に接地した直後、前方に止まった海保機に乗り上げ、制御不能のまま約1700メートル滑走した。左右両エンジンは海保機の主翼にぶつかり損傷を受けたが、主脚が無事だったため、機体は横転しなかった。
衝突した2機の位置関係や機体構造の違いから、日航機のコックピットや客室にその後の非常脱出に支障が出るほどの損壊がなかったことも幸いした。事故の衝撃で身動きができなくなる負傷者もおらず、多くの乗客が機長や客室乗務員の指示に従い、冷静に行動した。379人が脱出したのは衝突から11分後、非常脱出の開始から7分後だった。
火災は両エンジンと主脚格納室付近から発生した。非常脱出中は客室内の延焼は免れたが、後方付近は相当量の煙が充満し視界も悪かった。全員が脱出した直後に客室内にも燃え広がり、約8時間半後に鎮火した。
炎上した日航機は、エアバスの最新鋭機A350-900型。軽量で強度も高い炭素繊維と樹脂の複合材を機体全体の53%に使用している。アルミ合金を多用した従来機と同等の耐久性、耐火性を持ち、ロールス・ロイス社製エンジンを搭載したことでも知られる。
ただ、羽田事故では燃えた複合材の粉塵(ふんじん)に、多くの消防士や鎮火後に現場入りした安全委の調査官がさらされた。粉塵防護の装備品も持っていなかった。経過報告によると、短期的には健康への影響も懸念されるという。
安全委は、被害軽減の観点から①2機の損傷状況②日航機による非常脱出③消火・救難-の状況分析を今後も進める。報告書は、事故が安全設計上の想定を大きく超えていたと指摘した上で「諸条件が違えば人的被害が拡大していた可能性がある」と分析した。(白岩賢太)
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