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知床観光船事故から2年5カ月、異例の逮捕 現場にいない社長の過失、目撃者なく捜査難航

産経ニュース / 2024年9月18日 20時45分

北海道・知床半島沖で観光船「KAZU Ⅰ(カズ・ワン)」が沈没し、乗客乗員26人が死亡・行方不明となった事故から約2年5カ月。第1管区海上保安本部が18日、運航会社「知床遊覧船」社長、桂田精一容疑者(61)の過失を認定し、異例の逮捕に踏み切った。目撃者がなく捜査は難航したが、事故の重大性を鑑み、状況証拠を積み重ねながら立件にこぎ着けた。

「本件は単独での航行中に船が沈没し、その解明には困難を極めたが、捜査を尽くして沈没原因を特定した。容疑者は運航管理者でありながら安全義務を怠り、それが事故につながった」。18日午後、カズ・ワン事故で運航会社社長が逮捕されたことについて、海上保安庁の瀬口良夫長官は記者会見でこう言及した。

事故は令和4年4月23日、知床半島西側の観光名所「カシュニの滝」沖で発生。これまでに20人の遺体が見つかり、乗客6人が行方不明となった。1管は同年5月、業務上過失致死容疑で運航会社を捜索。国土交通省は翌6月、同社の旅客船事業許可を取り消した。

一方、国の運輸安全委員会も事故原因を調査し昨年9月、カズ・ワン船首付近のハッチから浸水したことが沈没原因とする調査報告書を公表。船首甲板から船倉に入るハッチの蓋に部品の経年劣化や緩みがあり、「ハッチの密閉が不十分だった」と指摘した。

報告書によれば、事故当日の天候が「風速最大15メートル、波高3メートル以上」になる恐れがあったにもかかわらず、カズ・ワンは「海が荒れれば戻る」という条件付きで出航。同社は海上運送法に基づき「風速8メートル以上、波高1メートル以上」になる可能性があれば運航を中止するとの基準を定めており、これが順守されていなかった。

ただ、船の安全は一義的な責任を船長が負う。業務上過失致死罪は、個人が事故の具体的な危険を予見でき、結果を回避できた可能性があったかどうかが成立要件となるが、知床事故では死亡した豊田徳幸船長=当時(54)=を含め「目撃者」になり得た乗員乗客全員が死亡・行方不明となり、捜査は難航した。

海保内部でも事故当時、現場にいなかった桂田容疑者の「過失」を立証するのは難しいという意見もあったが、18日に記者会見した1管の捜査幹部は「さまざまな鑑定やデータを分析し、運航管理者である容疑者が乗客の安全確保義務を怠ったと判断した」と述べた。

だが、海保OBは「船舶の世界では古くから安全を預かる責任は、現場の船長にあるとの考えが根付いている。実際に船長の権限は大きい。海保側は社長の刑事責任を問う根拠を見つけ、検察も立件にゴーサインを出したとは思うが、公判維持は難しいかもしれない」と指摘する。

旅客船事故として平成以降、最悪の規模とされる知床事故。桂田容疑者の責任の所在をどこまで追及できるのか。事故の真相究明がこれから始まる。(白岩賢太)

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