『沈まぬ太陽』の呪縛、JAL相次ぐトラブルでお詫び行脚の女性社長 問われる経営手腕
産経ニュース / 2025年2月11日 11時30分
機長の飲酒問題や空港内での接触事故などが相次ぐ日本航空が揺れている。空の安全を脅かすトラブル続発の背景には「身内に甘い」企業風土もあるとされ、初のCA出身社長として注目された鳥取三津子氏のお詫び行脚が続く。航空会社の腐敗を描いた山崎豊子の小説『沈まぬ太陽』。その舞台となったナショナルフラッグで何が起こっているのか。
「企業風土として身内を必要以上に守り、おかしいことをおかしいと言えない状況がある」。日航国際線で昨年12月、機長と副機長(いずれも当時、解雇)からアルコールが検出され出発が遅れた問題で、鳥取社長は1月24日、国土交通省に再発防止策を提出後、報道陣の取材に深々と頭を下げた。
御巣鷹事故の年に入社
一連の問題を巡っては、機長と副機長が実際の飲酒量より少なく偽り、会社への報告で口裏合わせしていたことが国交省の立ち入り検査で判明。日航上層部も事案を把握しながら、国への報告対象ではないと判断し、報告が遅れたことも明らかになった。
鳥取社長は問題への対応で「判断の誤りがあった」と述べ、今後は過度な飲酒傾向のある「要注意者」の社員をリスト化し、赤坂祐二会長を安全管理の最高責任者から解任するなどの再発防止策を発表。実効性を評価するため、社外取締役らでつくる検証委員会を月内に設置する。
日本の航空大手で初の女性トップとして昨年4月に就任した鳥取社長だが、就任後はお詫び行脚が続く。同年5月には福岡空港で日航機が管制指示を誤認し滑走路手前の停止線を越えたり、羽田空港の駐機場で日航機同士が接触したりする事案が発生。2023年11月以降、米国で起きた3件のトラブルも踏まえ、国交省航空局長に直接謝罪した。
今月に入ってからも米シアトルの空港で日航機が他機と接触し、右主翼の先端部が損傷。米国家運輸安全委員会(NTSB)などが航空事故として調査に乗り出すなど、JALの安全管理に疑問符がつくトラブルが後を絶たない。
鳥取氏が後に日航と経営統合する日本エアシステムの前身、東亜国内航空に客室乗務員として入社したのは昭和60年。この年の8月、御巣鷹山で乗員乗客520人が犠牲となった日航ジャンボ機墜落事故が起きた。「事故の衝撃は今も強く心に刻まれている」。昨年1月の就任決定会見でこう振り返り、「安全運航の大切さを次世代に継承する責任感を今も持っている」と語った。
「外様、CA、女性」
かつて日航を巡る経営は、山崎豊子が『沈まぬ太陽』で描いたように、激しい労使対立と「半官半民」による官僚主義が社内にはびこり、政治家までも経営に口出しする内紛の歴史だった。御巣鷹事故を契機に経営陣も刷新されたが、平成22年には会社更生法の適用申請を余儀なくされ、一度は経営破綻した。負債総額は約2兆3千億円。金融機関を除く事業会社としては過去最大の規模だった。
『沈まぬ太陽』の時代に比べれば、破綻直前まで8つの労働組合が乱立した労使関係は「正常化しつつある」と日航社員は言う。「親方日の丸」と揶揄された経営陣ついても「経営企画系出身がトップだった時代に比べれば、パイロット、整備士、CA出身のトップが続く今はマシな方」と内情を明かした。
「異例尽くし」の女性社長として脚光を浴び、その経営手腕や安全運航への期待が一身に集まる鳥取社長にとって、過去の失敗から学ぶことは多い。だが、社長就任後に相次ぐトラブルへの改革はいまだ道半ばにあり、効果も未知数だ。日航社内からはこんな声も聞かれる。「外様、CA、女性。やっかみがないと言えば嘘になる」
今年は御巣鷹事故から40年の節目。日航社内でも事故を知る現役社員は1%に満たない。当時を知り、安全運航への揺るがない決意を語った鳥取社長。その真価がいよいよ問われる。(白岩賢太)
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