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東京・池袋「魔の交差点」が環境改善へ 事故件数全国ワースト1…六差路で3層、橋脚林立

産経ニュース / 2024年11月2日 16時52分

東京・池袋にある4本の道路が立体的に入り組んだ交差点で交通事故が多発している。土地勘のない不慣れなドライバーが事故を起こしやすく、昨年は事故件数が全国ワースト1となり、警察や国土交通省が道路環境の改善に乗り出した。全国の交通事故件数が減少傾向にあるなか、危険度の高い交差点は都市部に集中しており、安全性を高める対策が急務だ。

3層構造

事故が多発しているのは、JR池袋駅近くにある「池袋六ツ又交差点」。日本損害保険協会が9月にまとめた「全国事故多発交差点マップ」によると、昨年1年間に発生した事故は全国最多タイの計19件に上った。

「日本一危険な交差点」「魔の交差点」などの異名を持つこの交差点は3層に分かれる立体構造。最下層は、国道と2つの都道、区道の4路線が6方向から交わる「六差路」になっている。陸橋の2層目は、国道と都道が合流・分岐する「三差路」交差点。3層目には、首都高速道路が走り、交差点内には高架を支える5本の橋脚が林立している。

六差路→五差路

警視庁池袋署によると、昨年の事故19件全てが、同署の管外や都外から訪れたドライバーによるものだった。交差点をよく通るという50代の女性ドライバーは「道を知らないと信号が分かりづらい。初めて利用する人には難しい」と話した。

池袋署が事故原因を分析したところ、最下層の六差路は「(高架によって)日中も薄暗く、橋脚も多いため、車も曲がる先や横断歩道が見えにくい」ことが分かった。署は交差点付近の交通違反の取り締まりを強化し、ドライバーへの注意喚起を徹底している。陸橋上の三差路では、信号の見落としによる事故が多いため、標識の設置などにも着手するという。

ドライバーの安全意識を向上させるソフト面の対策は不可欠だが、ハード面の事故を誘発しやすい構造の改良も課題だ。事故原因を調査する交通事故鑑定人の中島博史氏は池袋六ツ又交差点の構造を「道路が直線的に交差しておらず、車の動きが不規則になりやすい」と指摘する。

国交省東京国道事務所は、最下層の六差路に合流・分岐している区道を廃止し、五差路とする改良計画に着手している。

ラウンドアバウト

警察庁の統計によると、昨年全国で発生した交通事故件数は約30万7千件。平成25年の約62万9千件から半減している。インフラ整備や取り締まり推進が背景にあるが、交差点での事故防止は依然として課題だ。

安全性を高めるため、信号機を設置せず車を一方通行の時計回りに周回させる「ラウンドアバウト」と呼ばれる環状型の交差点の導入も進められている。車の動線が単純化され、進入時に必然的に速度を落とすことになるため、事故の減少などにつながる。ただ、複雑な交差点では運用が難しく、国交省によると、国道や都道府県道など幹線道路の交差点への導入は1割程度にとどまる。

抜本的対策が模索される中、中島氏は「交差点では、まずドライバーが車間距離を空ける意識を持つべき。道路管理者は車線を色分けして示すなど、どこを走ればいいのかを分かりやすくする工夫が必要だ」と話した。

事故多発の交差点 3大都市に集中

日本損害保険協会のマップをみると、交通事故が多発している交差点は東京、大阪、名古屋の3大都市に集中している。

池袋六ツ又交差点と並んで事故件数が全国最多の19件だったのが、2本の幹線道路が交わる大阪市住吉区の「長居交差点」だ。1日計約4万人が利用するJRと大阪メトロの長居駅が近くにあり、人通りが多いこともリスクを高めている。

交差点内にある地下鉄の出入り口がドライバーの視界を妨げ、車が歩行者と接触する事故が多い。交差点近くにあるバス停やタクシー乗り場も、車線変更時の事故を誘発しているという。

大阪市には、ワースト3位の「谷町9丁目交差点」(天王寺区、事故件数16件)と同4位の「谷町4丁目交差点」(中央区、同15件)もある。

5位は東京、大阪、名古屋の7つの交差点。その一つで、名古屋市緑区の「折戸交差点」(同14件)は、高速道路と併走する国道が市道と交わっている。高速道路を走行する車両に引っ張られて速度を上げがちの車による追突事故が目立ち、死者も出ている。(宮崎秀太)

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