1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 社会
  4. 社会

「やぶそば」も祝福、神田消防署が火災死者ゼロ5000日 背景に住民との団結

産経ニュース / 2024年6月11日 20時44分

次の1千日を見据える岡部卓海署長(宮崎秀太撮影)

東京消防庁神田消防署が5月8日、管内での火災による死者ゼロ5000日を達成した。都内消防署における更新中のものでは3番目の長さ。建物の難燃化や消火設備の拡充など、時代とともに火を封じ込める環境は整ってきているが、昨年も都内では87人(速報値)が火災により死亡。人命が奪われる火災は絶えない。快挙の背景には、署と地元住民のタッグがあった。

下町の風情

都内でもにぎやかなエリアを管轄する神田消防署。管内には神田駅や秋葉原駅を擁し、随所に下町の風情を漂わせながら、繁華街やオフィスビル群が広がる。年間約40件の火災が発生している同署管内だが、死者は平成22年8月を最後に出ていないという。

快挙を喜ぶ一人が名店として知られる「かんだやぶそば」4代目の堀田康彦さん(80)だ。同店は25年2月、電気配線の不具合から出火。けが人こそ出なかったが、木造2階建ての店舗が半焼した。

1年8カ月もの休業を余儀なくされた中、救いの手を差し伸べたのが神田消防署だった。再建にあたり、防火方法や自動消火装置、火災警報器の設置場所などについて手厚い助言を受けた。「お客さんから復活の要望が多かったので、早く開店できてよかった」と署への感謝を口にする。

「火災による死亡事故は悲劇だ。地域住民としてうれしい」。火の怖さを知る堀田さんだけに、記録更新への喜びはひとしおだ。

同署は飲食店が入るビルで行われる自衛消防組織の消火訓練も支援。昨年度は106件に出向いて指導した。同署の中村深夏(みか)予防課長は、「日頃から対応を身につけていないと、いざというときに何もできない」と訓練の大事さを訴えてきた。

夜警も健在

非常時に備えているのは、消防関係者だけではない。死者ゼロ5000日の記録は「町会でも訓練や呼びかけを行っているからこそ」と語るのが、内神田美土代(みとしろ)町会の町会長として火災予防に取り組んできた鈴木光夫さん(69)だ。

地元の町会では長年、消防署と合同で防火防災訓練を定期的に実施。今年3月にも、神田駅近くの9町会が署と防火防災訓練に臨んだ。鈴木さんは「この辺りに昔から住んでいる人はみんな参加している」と力を込める。

拍子木を鳴らして「火の用心!」とかけ声を合わせる「夜警」も神田の地では健在だ。昨年の師走は、寒風の中、管内の75町会が防火を呼び掛けたという。

リスクも変化

住民の強い絆で防火に取り組んできた〝下町〟だが、変化にも見舞われている。マンションなども増えて、新しく転入する住民は、近隣との関係が希薄で地元の防火活動に消極的になりがち。鈴木さんは「もっと参加してもらいたいな」と寂しがる。

防火活動に参加しない人にも意識を高めてもらおうと、東京消防庁はホームページで動画「火災から命を守る自主防火」を公開。消火方法や避難の際の注意などを紹介している。

近年はスマートフォンの充電などに使われるリチウムイオン電池が出火原因となるなど、火災リスクは姿を変えながら私たちに付きまとう。岡部卓海署長は「次は『死者ゼロ6000日』に向け、これまでの取り組みを継続していきたい」と、気合を入れなおした。(宮崎秀太)

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください