虚偽の救助要請、抑止狙い摘発 拡散横行も難しい取り締まり
産経ニュース / 2024年8月1日 21時23分
能登半島地震の発生直後、交流サイト(SNS)に虚偽の救助要請を投稿したとして、石川県警が7月下旬、偽計業務妨害容疑で埼玉県の男(25)を逮捕した。男は地震の混乱に乗じ、「自分の投稿に注目を集めたかった」と供述。実際に救助に向かう事態となり、警察当局は類似犯の抑止も見据え、摘発に踏み切った。地震から1日で7カ月。発生当時は悪質投稿の拡散行為も横行したが、徹底した取り締まりは難しい状況だ。
県警によると、男はX(旧ツイッター)のアカウントで、元日夜以降、同県輪島市の被災者を装い、「倒壊した家屋に家族が挟まれた」といった虚偽の投稿を十数回行った疑いがある。投稿を見た人が知人を通じ市に通報。県警の機動隊員10人が翌2日午前、付近を捜索したが、建物は倒壊していなかった。
県警は警察庁サイバー特捜隊から情報提供を受け、投稿した男を特定。今回の事件について捜査幹部は「偽の救助要請は救助活動に支障を生じる恐れがあり、(放置すれば)今後も同様の事態が起きかねない。『一罰百戒』ではないが、摘発が抑止になる」と強調する。
能登半島地震ではほかにもX上で、「助けて」「SOS」といった文言とともに、住所や被害状況を記した真偽不明の救助要請が何度も投稿、拡散(リポスト)された。
Xは昨年、閲覧回数に応じて広告収益が得られる仕組みを導入。この収益稼ぎを狙った海外のアカウントが真偽不明の救助要請を拡散したとみられ、閲覧が約36万回に及んだものもあった。
男の投稿を含め、虚偽の救助要請に基づき、実際に消防や警察が出動したケースは数件以上あったとみられ、地震で家族を亡くした人からも「噓の投稿がなければ、一人でも多くの命を助けられたかもしれないのに」と憤りの声が上がる。
こうした事態を受け、総務省の有識者会議は7月16日、SNSアカウントの本人確認の徹底を事業者に課すといった対策をまとめ、違法情報の迅速な削除対応を事業者に義務付ける方針を打ち出した。
削除対応をすべき偽情報については「検証可能な誤りが含まれている」といった要件も明示。虚偽の救助要請はこの要件に該当するとみられる。
警察庁も今後、災害時に把握したSNS上の偽・誤情報について、事業者に対する迅速な削除要請を行う方針だ。
一方、虚偽投稿の拡散を巡っては、善意から広めてしまう人も少なくないとみられ、別の警察幹部は「虚偽投稿の拡散は、犯意があるかどうかも分からない。拡散の取り締まりにまで乗り出すのは、現実的ではない」としている。
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