東京・湯島で急増のベトナムガールズバー 〝元祖〟の店摘発、不法就労疑いも
産経ニュース / 2024年11月5日 8時0分
上野恩賜公園(東京都台東区)のほど近く、多国籍の飲食店が立ち並ぶ繁華街、湯島。この界隈で最近勢いを増しているのがベトナム人女性が接客するガールズバーだ。警視庁は10月、無許可で接待営業を続けたとして、バー「Queen」の経営者の女らを摘発した。女は無許可接待のかたわら「優良経営」で次々と従業員を集め、六本木など都内各地に進出。周辺の同種店舗も元従業員らが独立し開店したといい、〝先駆者〟として手腕を振るっていた。
アオザイ姿の店員が…
Queenの系列5店舗に警視庁の一斉捜索が入ったのは、週末の10月19日夜のことだった。店があったのは都内の湯島、上野、錦糸町、六本木、神田の各地区。捜査員に連れられ、ベトナムの民族衣装「アオザイ」姿でうつむきがちに店を後にする女ら。周囲には人だかりができていた。
風営法違反の疑いで、経営者のベトナム国籍、ズオン・ティ・ミン・ホン容疑者(28)=東京都台東区=ら17人が逮捕されたが、近隣の飲食店関係者からは「いつ摘発されるんだろうと思ってた」との声も漏れた。
店は行政指導を複数回受けていたにも関わらず、風俗営業許可を取らずに従業員が客に同席して酒を提供し、指名料を受け取ったり、客とボードゲームをしたりする接待営業を続けていたからだ。
「高給」で好評
捜査関係者などによると、ズオン容疑者は約10年前に日本に留学して経営を学び、ベトナム料理店を開店。客が文化について尋ねてくるなど、関心の高さに商機を見いだし、ベトナム人女性と話せるガールズバーを始めた。
平成31年に湯島に1店舗目を出店すると盛況となり、各地に店舗を増やして新型コロナウイルス禍を挟んで計約4億4千万円を売り上げていたという。
同郷の仲間と働けることや、客が従業員の飲み物を注文すると代金の一部が給与となる「ドリンクバック」などにより高給が得られることから、店は在日ベトナム人女性の間でも評判を呼んだ。
普通の飲食チェーンでアルバイトをしていたが、「給料が低い」とこの店で働き始めた従業員もいたという。
従業員は留学生が多いが、中には不法滞在の疑いがある者もいた。ズオン容疑者は、留学生は風俗営業店で働けないため無許可で営業を続けたという趣旨の供述もしているといい、警視庁は、店が不法就労を助長していた疑いもあるとみて調べている。
韓国、フィリピン、中国に続き…
「元は韓国のクラブ、次にフィリピンや中国の店が増えたが、近年はベトナムの店が進出するようになった」。湯島の白梅商店会の中村充会長はこう話す。
街を歩くと、女性がアオザイ姿で店の前に立つベトナムバーが何軒か確認できる。「ここ数年で急に増えた」「通りを渡ると10軒くらいあるよ」。数を増やすベトナムバーの中でも、先駆けだったのがQueenだという。
現在は店の外に置かれた看板の電気が消え、「臨時休業」の張り紙も。近くで飲食店を営む40代の女性は店を指さして話す。「ベトナムバーはこの店が一番古い。ここから独立してどんどん増えていったんですよ」
「こんばんは。ベトナムバーです」「飲んでいって」。Queenの摘発後も、湯島の繁華街には、鮮やかなアオザイに身を包んだ別の店のベトナム人女性らが、道行く男性に声をかける光景は続いている。(橋本愛)
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