注目が収入に…SNSや動画配信で選挙活動過激化 都議選や参院選控え「法整備も必要」
産経ニュース / 2025年1月24日 20時8分
昨年、交流サイト(SNS)や動画サイトで注目集めや売名を狙った過激な選挙活動が問題となった。自民党はSNSを運営するプラットフォーム事業者が動画投稿による収益の支払いを停止できるよう法改正を検討。今年は都議選や参院選といった大型選挙も控えており、SNSと選挙を巡る議論はさらに活発化しそうだ。
選挙活動を収益化
昨年4月に行われた衆院東京15区補選の選挙期間中、政治団体「つばさの党」関係者が、罵声を浴びせながら他陣営の選挙カーを追跡する様子を動画配信し、世間を騒がせた。ユーチューブなどの一部サイトはインプレッション(表示回数)に応じて対価が支払われ、注目されればされるほど収益につながる。
つばさの党が選挙期間中に配信した動画は40本以上。同団体から立候補した根本良輔被告(30)は「(動画配信を)ビジネス化したい」と語っていたが、警視庁捜査2課は他陣営に妨害行為をしたとして黒川敦彦被告(46)らを公選法違反(自由妨害)容疑で逮捕。公判は現在も続いている。
昨年7月の都知事選では「当選を目指さない」候補が乱立した。立候補者数は史上最多の56人に上り、うち24人は政治団体「NHKから国民を守る党」だったが、ポスター掲示枠をインターネットで販売するなどし、選挙とは無関係の内容や個人の主張などを掲示するケースが目立った。
11月の兵庫県知事選では、斎藤元彦知事の再選後、PR会社の女性代表が選挙期間中の広報全般を担ったとネット投稿し、公選法違反の疑いも指摘された。
今年1月には県議会の百条委員会で斎藤知事を巡る疑惑告発文書を追及した元県議の男性が死亡。自殺とみられるが、SNS上では男性への誹謗中傷も多かったとされる。死後にも「逮捕される予定だった」などと誤情報が拡散し、事態を重く見た兵庫県警本部長は「事実無根」と否定する異例の発言をした。
注目経済の弊害
ネットを利用した選挙活動が過激化し、法の網をかいくぐるような問題行動が頻発していることについて、選挙に詳しい慶応大の大屋雄裕教授(法哲学)は「注目されることが収入につながる『アテンション・エコノミー(注目経済)』の弊害だ」と指摘。ネット選挙と課金システムのあり方に警鐘を鳴らす。
SNSでは候補の主張や政策をこれまで以上に広く発信できるメリットもあるが、当選を目的としない候補が現れた場合、不適切な利用もあり得る。大屋氏は「有権者がSNSを含めた情報源とどう健全に付き合うかが問われる。選挙に関するコンテンツには対価を払わないなど、法整備も視野に入れた対策が必要だ」と話す。(外崎晃彦)
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