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三菱UFJ行員、発覚逃れ重ねた貸金庫巨額窃盗 投資やギャンブル損失穴埋めの悪循環

産経ニュース / 2025年1月20日 18時47分

三菱UFJ銀行の貸金庫から金品が盗まれた事件で、警視庁捜査2課に窃盗容疑で逮捕された元行員、今村由香理容疑者(46)が「窃盗額が加速度的に増えた」と供述していることが20日、捜査関係者への取材で分かった。銀行への信頼を揺るがした事件の摘発から21日で1週間。投資やギャンブルの損失を穴埋めするため、今村容疑者は貸金庫のセキュリティーを突破するよう手を尽くす一方、場当たり的に盗みを続けていた様子が浮かび上がってきた。

17億円分窃取

捜査関係者や銀行関係者によると、今村容疑者は平成11年、一般職で入行した。20年ごろから競馬やFX(外国為替証拠金取引)にのめり込み、損失を重ねるようになった。25年には約700万円もの負債を抱え、民事再生法適用を申請。一時はやめていたFXや競馬も26年には再開したという。

処分歴もなく、試験を経て総合職に転じるなど仕事では一定の評価を得ていた今村容疑者は、令和2年4月に江古田支店(東京都練馬区)で貸金庫の管理を任されるようになった。「貸金庫に多額の現金を預けている利用者がいることを初めて知った」(今村容疑者)。その後まもなく窃盗が始まったとみられる。

足がつかない現金から始めたが、損失穴埋めに加えて犯行隠蔽のための盗みもするようになったため、時期を追うごとに窃盗額は増えていったとみられる。

6年秋、自身が玉川支店(世田谷区)に異動になるとの話を聞き、状況はさらに悪化する。担当者が代わり、利用客が来店すれば窃盗はすぐに明るみに出る。盗んだ現金を補塡するために、形状が異なったり、シリアルナンバーが刻印されていたりして発覚しやすいことからそれまでは躊躇していた金塊にも手を出した。

捜査2課によると、発覚までの約4年半で、17億円相当もの金品が盗まれたとみられるという。

立場を悪用

捜査で判明してきた犯行の手口は、貸金庫の管理者という権限を悪用したものだった。

利用者と鉢合わせするのを防ぐため、「窓口が閉まる午後3時以降を狙った」という今村容疑者。開閉する際に残る記録も、システムの電源を切ることで有名無実化していた。ほかの行員の目を盗んで金塊を自席に隠し、退勤時に外へ運び出して現金化した。

後で「原状回復」できるようにと、金庫内をあらかじめスマートフォンで撮影することも忘れなかった。押収されたスマホからは800枚もの写真が見つかっている。

札束は帯封を丁寧に外して保管し、返却時に再び装着した。開閉用の鍵は封筒を再びのり付けしていたという。しかし、FXで10億円、競馬で3千万円にまで積みあがった損失と窃盗の隠蔽を両立させることはできず、犯行は発覚した。

三菱UFJ銀行の管理態勢の甘さが露呈するとともに、銀行の貸金庫業務への信頼も大きく揺らいだ事件。同行などによれば、今村容疑者の窃盗は2支店での犯行が全てとみられるが、捜査2課は金品の流れや窃取金の使途などについて裏付けを進めている。(外崎晃彦)

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