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「トクリュウ捜査」新体制半年、警察庁が司令塔を初配置 撲滅なるか

産経ニュース / 2024年9月2日 10時0分

歌舞伎町の通称「スカウト通り」。悪質ホストクラブの背後でトクリュウが暗躍し、不当な利益を得ているとされる=東京都新宿区(斉藤佳憲撮影)

犯罪者集団のマフィア化(地下組織化)に伴って台頭してきた「匿名・流動型犯罪グループ(トクリュウ)」。社会の新たな脅威と位置付け、警察庁の指揮のもと全国47都道府県警がトクリュウの徹底摘発にかじを切ってから9月で半年となる。今年度から初めて警察庁に配置された担当幹部ポストを司令塔に、実態解明が一気に本格化している。

警視長が指揮

警察庁が新たな犯罪者集団の類型としてトクリュウの呼称を使い始めたのは昨年から。その典型例とされたのが、特殊詐欺から広域強盗へと移行した「ルフィ」と名乗る指示役らからなるグループだった。

トクリュウの活動範囲は広く、組織の内部構成もさまざまだ。警察庁の露木康浩長官は昨年11月、詐欺や窃盗、強盗などと並び「(トクリュウが)悪質ホストクラブの背後で不当に利益を得ている」と指摘。

今年に入っても、元暴力団員がメンバーにいるトクリュウが、指定暴力団稲川会側や同住吉会側に対し、特殊詐欺とインターネットカジノの違法収益を「上納」していたケースが京都府警や警視庁の捜査で確認されたことが、明らかになっている。

こうした状況を受け、警察庁は今年4月、「トクリュウ対策担当」となる参事官を初めて任命した。

参事官ポストの階級は、警視総監、警視監に次ぐ警視長。暴力団を担当する警察庁組織犯罪対策1課や同2課の課長と同じで、地方では中小規模の県警トップである本部長に充てられる上級幹部職だ。

7月に公表された令和6年版の「警察白書」では、トクリュウについて詳報。中核メンバーが匿名化され、DM(ダイレクトメッセージ)などで緩やかに結びついた構成員が入れ替わりながら犯行を繰り返すことなど、特徴を明記した上で、匿名性の高い通信手段や暗号資産など最新の情報通信技術を取り入れ「資金獲得の裾野を広げ続けている」と指摘した。

過去にも「命名」

警察当局が新たな犯罪類型・犯罪集団に名称をつけて取り締まりを強化するのは、しばしば行われている。

たとえば、オレオレ詐欺に代表される特殊詐欺。一時期は「聞いても手口が分からず、ピンとこない」といった声が多かったため、オレオレ詐欺のイメージから「母さん助けて詐欺」と命名したが、還付金詐欺やカード詐欺など手口の多様化もあり実態と合わず、定着しなかった。

記憶に新しいのが、平成25年に定義づけられた「準暴力団」だ。旧関東連合など元暴走族の組織的な違法行為が目立ち始めた時期で、暴力団対策法に基づく指定・認定を受けていないが治安を脅かすような反社会的集団をこう呼び、摘発を強化した。

ただ、「裏社会に詳しいフリージャーナリストの溝口敦氏が名付けた『半グレ』集団の方がしっくりきた」(法曹関係者)との意見は根強く、これまた定着したとはいいがたい。

世相を反映

一方、トクリュウについて警察OBは「暴対法ができた30年前から、犯罪グループの将来的な地下組織化、秘密結社化は予想されていたが、こういう組織は想像していなかった。そういう意味では、実態をよく表現している印象だ」と語る。

暴対法の度重なる改正や全国各地の暴排条例で規制が進み、暴力団の活動が縮小の一途をたどる中、組を離脱した元組員のグループや暴力団に属さない準暴力団、地下格闘技団体メンバー、同郷の外国人集団といった犯罪者組織が次々と台頭。トクリュウは、そうした反社会的勢力の新たな形といえる。

トクリュウを正式に命名する前から既に対策に着手していた警察庁では令和4年9月以降、取り締まりの強化を都道府県警に指示。今年4月に担当の参事官を置くと、全国警察のトクリュウ捜査を計画・立案する30人余りの参事官室も新設し、指揮命令系統を一本化した。

前述の警察OBは「インターネット上の辞書には既に『匿流』という名詞が掲載されているが、広辞苑に載るまで広く認知されるかは、暴力団並みに摘発が進むかにかかっているといえる」と語った。

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