猛毒トリカブトを投与 「悲劇の夫」、保険金目当てに妻殺害 警視庁150年 88/150
産経ニュース / 2024年10月13日 7時0分
昭和61年5月、沖縄県の石垣島で元ホステスの女性=当時(33)=が不調を訴え突然死した。写真週刊誌などが女性の夫の神谷力が過去に2回、妻を亡くし、現妻には多額の保険金が掛けられていたとの記事を掲載したのを皮切りに、報道は過熱した。
妻の行政解剖の所見は「急性心筋梗塞」。しかし、執刀した琉球大助教授は症状の出方などから服毒死の疑念を持ち、血液を保管していた。鑑定の結果、血液からは毒草「トリカブト」とふぐの毒が検出された。
警視庁捜査1課は、難事件の捜査を担い「穴掘り班」と呼ばれた「強行犯捜査2係」を投入。名刑事として知られた「落としの金七」こと小山金七(故人)を中心に捜査を進めた。
『警視庁捜査一課刑事』(飯田裕久著)などによると、十数カ所の専門機関に鑑定を依頼、札幌まで神谷を追い、極寒の中で張り込みを強いられるなど捜査は苦労続きだった。1課は神谷が62鉢のトリカブト、約1200匹のくさふぐ、200匹以上のラットを購入していたことを裏付ける。神谷は平成3年7月、殺人容疑で逮捕された。
14年、最高裁で無期懲役判決が確定した。無職にもかかわらず豪遊を重ねて生活に窮した神谷は変死した2人目の妻に毒物を継続的に投与して、その症状を観察。毒物の知見を蓄えると、保険金目当てに3人目の妻に「栄養剤」として毒を飲ませ、殺害した―。判決が認定したのは冷酷で周到な犯行だった。神谷は24年、大阪医療刑務所で73歳で病死した。=敬称略
(内田優作)
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