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監禁を自演、「婚約者」に現金要求 既婚45歳男による結婚詐欺の舞台裏

産経ニュース / 2024年6月18日 8時0分

警視庁大崎署から護送される西村祐一容疑者=7日午前、東京都品川区(岩崎叶汰撮影)

「彼氏が拉致監禁されて、お金を要求されている」。こんな通報をもとに捜査員が訪ねた北海道の民家には、妻や子供らと何気ない日常を過ごす「彼氏」の姿があった。既婚者でありながら別の女性と婚約し、現金を詐取しようとしたとして、45歳の男が今月、警視庁に逮捕された。巧みな演技力を駆使して約2年にわたり女性をだまし続けていた「結婚詐欺」の舞台裏とは-。

再三の無心

7日朝、警視庁大崎署1階の車寄せに姿を現したのは、シルバーがかった髪にマスクをつけ、上下スエット姿でうつむき歩く男だった。署が5日に詐欺未遂容疑で逮捕した函館市富岡町の無職、西村祐一容疑者だ。

署によると、西村容疑者が神奈川県に住む30代の被害女性と出会ったのは2年ほど前。当時サービス業をしていた仕事の関係で知り合い、交際をスタートさせた。

女性は西村容疑者について「精神的な支え」と語り、自身の悩みを相談するなど信頼を寄せていたという。女性は昨年夏ごろ、西村容疑者にプロポーズ。婚約関係となった。

「財布を無くした」「車の修理代が必要」。西村容疑者は、交際を始めてから事あるごとに理由をつけて女性から現金をせびり、気づけば総額は数百万円に上った。捜査関係者によると、それでも女性は「いずれ結婚すると思っていた」と、西村容疑者を信じて疑わなかったという。

だが実は、西村容疑者はこの時期に別の女性と結婚。2人の間には生後間もない子供に加え、養子の子供もおり、4人で仲むつまじく暮らしていたのだ。

驚いて110番

妻子がいる身でありながら、被害女性の信頼に乗じてさらに現金をだまし取ろうとした西村容疑者は、一芝居を打つ。結果的に、その行動が裏目に出る。

今年5月16日昼ごろ、被害女性に西村容疑者から、1本の電話が入った。

「ヤミ金から20万円を借りる途中に現金を持って逃げた。その金で君へプレゼントする服を購入したが、捕まって車の中にいる。20万円返すまで解放してもらえない」

驚く女性の携帯電話に、「ヤミ金業者」を名乗り、こんなメッセージも届いた。「この人お金借りてるんだよね。婚約者なら責任かぶるしかないよね。返済は一括、25万でいいよ。この人の口座に入れて。返さなければ違う仕事させるから」

もちろん、借金の事実も監禁された事実もなく「全くの出まかせ」(捜査関係者)。だが、お金よりも西村容疑者の身を案じた女性はすぐ110番通報し、婚約者の〝危機〟を伝えた。

大崎署は監禁事件として捜査を開始。同日夜、「被害者」がいるとされた北海道函館市の民家を捜査員が訪ねると、そこには「本物」の妻子とともに、西村容疑者がいた。

被害女性が愛ゆえに取った行動により、あえなく噓が暴かれた西村容疑者。逮捕されると「金に困っていて、生活費に当てるつもりだった」と、容疑を認めた。

一方で、西村容疑者を巡っては、この女性以外からも、だまされたとみられる女性からの相談が警視庁に複数寄せられているという。署は詳しい経緯を調べている。(宮崎秀太)

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