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まさか同級生が…高校生に増える「校内盗撮」 電子マネーで報酬受け取り、高い依存性

産経ニュース / 2024年11月29日 11時39分

教室で生徒による盗撮が増えている(写真と本文は関係ありません)

性的部位や下着をひそかに撮影する盗撮が後を絶たない。最近はスマートフォンを使ってアルバイト感覚で盗撮に手を染める高校生らが増え、同級生らが被害に遭うケースが目立っている。しかも報酬は電子マネーで簡単に支払われる場合が多い。身近に潜む盗撮リスクの背後には、犯行をそそのかす大人の存在がちらつく。

授業中にSNS通じて指示

「もっと近づけて」

「違う角度から撮影しないと、よく見えないよ」

SNS上にリアルタイムで中継されていたのは、ある高校の授業中の動画だ。盗撮されたとみられる女子高校生のスカートの中の動画に対し、アクセスしたSNS利用者から〝指示〟やコメントが次々と寄せられた。

「おそらく女子高生の近くに座っている生徒が盗撮したのだろう」。ボランティアでインターネット上の盗撮画像を監視する「ひいらぎネット」代表の永守すみれさんは、動画を見てこう分析した。

永守さんは「全てを把握しているわけではない」と前置きしつつも、「ネット上に出回る盗撮画像の量は増えているように感じる。子供同士での盗撮も増えている」と推測する。

昨年7月、相次ぐ盗撮を食い止めるための新法「性的姿態撮影処罰法」が施行された。性的部位や下着の盗撮行為のほか、画像・動画の提供やSNSなどでの拡散も処罰対象とした。

同法違反罪(撮影)は3年以下の懲役、または300万円以下の罰金となる。盗撮行為はこれまで都道府県の迷惑防止条例などで規制されていたが、処罰法で全国一律で禁じられることになった。

警察庁の調査によると、令和5年の盗撮に関する摘発件数は6933件(処罰法の撮影罪1203件、迷惑防止条例違反5730件の合計)で、処罰法が施行される前となる元年の3953件(条例違反のみ)の約2倍に達した。

リアリティー追及し、個人情報も同時に添付

特に、増加傾向にあるとみられるのが未成年者の盗撮行為だ。

犯罪精神医学の専門家として2000人以上の性加害者を治療してきた性障害専門医療センター(SOMEC)代表の福井裕輝医師は「センターを立ち上げた約十数年前と比べると、盗撮の加害者として診療に訪れる未成年者は20倍ぐらい増えたように感じる」と語る。

盗撮に手を染める未成年者のうち、被害者の大半は男女共学の学校に通う女子高生だという。盗撮する男子生徒は教室のロッカーにスマホを隠し、着替えている女子高生を撮影したり、女子トイレに小型カメラを設置したりして犯行に及ぶという。永守さんは「早朝に登校して盗撮の準備をしているようだ」と指摘する。

盗撮された被害者が「女子高生」と信じてもらえるよう、被害者本人と思われる卒業アルバムの顔写真や証明写真を盗撮画像と合わせて、ネットに投稿する悪質な例もあるという。

永守さんは「盗撮画像が本当に高校生のものだというリアリティーを持たせるための情報として、個人を特定できる情報が流出している」とも語る。

罪の意識薄く依存体質に

厳罰化されても盗撮に及ぶきっかけはどこにあるのか。

10代は性に目覚める年代だ。何気なく性的な話題をSNS上で検索しているうちに、ネット上で「おすすめ」として提供されたサイトに盗撮画像が混じるケースが多い。永守さんは「画像を目にすると、さまざまなコメントも同時に読むことが多く、自身の承認欲求をくすぐられた男子生徒らは『今度は自分も』と思い、行動に移してしまうことが多い」と指摘する。

盗撮画像はネット上だけにとどまらない。売買に発展する「商品」でもある。

永守さんによると、盗撮画像・動画は1つあたり数十円~数千円で取引され、支払いは電子マネーが多い。大人が盗撮機材や盗撮するタイミングなど、手口をアドバイスする書き込みもサイト上にあるという。複数枚を売ることができれば、未成年にとっては大金になることもある。

とりわけ中学生や高校生の女子生徒の盗撮画像は付加価値が高く、「プレミア化している」(永守さん)という。学校は誰でも自由に出入りできる空間ではないからだ。一度ネット上にアップされた画像はコピーされ、加速度的に拡散する。

盗撮された被害者は画像をもとに脅迫されたり、ストーカーにあったりして被害が拡大する危険性がある。被害者の人生を狂わせる重大な犯罪だ。

盗撮被害に詳しいレイ法律事務所の河西邦剛弁護士によると、未成年者の高校生でも、犯行が悪質だったり、盗撮を繰り返すといった事情があれば、処罰法違反などの容疑で逮捕される可能性がある。

福井医師は若年層が盗撮に発展しやすい背景について「家庭に問題がある中高生らが鬱屈した思いを発散するために、ネットを通じて盗撮に及んでいるケースが目立つ」と指摘する。

罪の意識の希薄さも一因という。盗撮のような「非接触型犯罪」は、相手が気付かなければ被害を与えていないという感覚に陥りやすいからだ。

福井医師は「相手を傷づけている認識に乏しく、犯行に及ぶハードルが低い」と指摘。その上で「スリル感や被害者への征服感、投稿を通じてネット上で称賛を受けたいという承認欲求も重なり、自己制御不能に陥る。結局、逮捕されるまで盗撮を繰り返し盗撮に手を染める依存性の高い犯罪なので、早期発見が重要だ」と訴える。

永守さんも「盗撮は重大な犯罪で、被害者が一生苦しむということを大人が強く認識し、社会全体で子供たちに伝える必要がある」と指摘する。(植木裕香子)

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