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反戦・反核「騒音集会」 広島市入園規制の効果はいかに あす8・6「原爆の日」

産経ニュース / 2024年8月5日 18時34分

広島平和祈念式典の規制範囲と主会場

米軍の原爆投下から79年となる6日、広島市の平和記念公園内で恒例の記念式典が開かれる。近年、会場周辺では拡声器を使って大音量で「反戦・反核」を訴える団体の活動が常態化。市は今年、「静かな慰霊」を実現するため、大規模な集会を公園全体で事実上禁じる規制を打ち出した。一方、団体側は例年通りの活動を行うことを宣言しており、市は警戒を強めている。

市は昨年まで、式典会場周辺のみで入場規制や手荷物検査を実施していたが、今年は対象を公園全域に拡大。6日午前5時に公園利用者にいったん敷地外に出てもらい、同6時半から検査を経て公園内に入れるようにする。

入園にあたっては、拡声器やプラカードなどの持ち込みを禁止。警備が妨害された場合は、市公園条例が禁じる「迷惑行為」と判断し、退去命令を出す場合もある。

こうした対策に乗り出すのは、公園内の原爆ドーム周辺で、厳粛な追悼とはほど遠い〝騒動〟がこれまでも繰り返されてきたからだ。

「8・6ヒロシマ大行動実行委員会(大行動)」は毎年、数百人規模の集会を実施。過激派「中核派」活動家の関与も指摘され、拡声器で団体の主張を訴えてきた。

これに対抗する団体も数年前から出現し、「静かに」と書かれたプラカードを掲げて対峙(たいじ)。昨年は大行動のメンバーが、市職員を押しのけて強引に集会場所を確保しようとしたため、広島県警は今年2月、暴力行為法違反の疑いで中核派活動家の男5人を逮捕した。別に団体同士の衝突も起き、2人がけがをした。

松井一実市長は5月の記者会見で「市は安全を最優先に考えて対応策を講ずべき立場にある。(団体間の)衝突が起こりうるものが持ち込まれないようにチェックする」と述べた。

一方、大行動側は規制について「法的根拠が曖昧」と反発しており、交流サイト(SNS)では例年通りの集会実施を宣言している。

対策躊躇の背景に「表現の自由」

平和を祈る6日の「原爆の日」に恒例化していた反戦・反核を訴える団体の大音量集会を巡り、広島市は今回からようやく、本格的な規制に乗り出す。これまで「表現の自由」との兼ね合いから対策に躊躇(ちゅうちょ)していたが、事態の悪化を受け、決断を迫られた形だ。

「広島から出ていけ」。昨年8月6日、平和記念公園内の原爆ドーム前では、式典に出席した岸田文雄首相を批判するシュプレヒコールが響いていた。一部参加者はヘルメットにマスクという、かつての学生運動の過激派をほうふつとさせるいで立ちだった。

慰霊に訪れた人からは「非常識だ」との声が漏れ、市が昨年実施した参列者へのアンケートでは、回答者の76・4%が集会やデモを「悪影響がある」と問題視。市は令和3年、「式典を厳粛の中で行う」との理念を定めた平和推進基本条例を施行したが、禁止事項がなく、こうした集会・デモに対する抑止力は限定的だった。

行政側が強い措置をとれなかった背景には、憲法が保障する「表現(集会)の自由」がある。公共スペースである公園は誰でも使用できるのが原則。過去には、沖縄県内の公園でデモを計画した団体の使用許可を認めなかった自治体の対応を「違法」とした司法判断もある。

ある市職員は「公園で政治的主張が展開されることは、一定程度受け入れなければならない」と話す。一方で昨年は、反戦・反核の団体側と、これに対抗する団体側との衝突も起き、けが人が出る事態に発展。公園管理者の市には、より厳格な安全確保が求められるようになり、入園規制の強化を決定。今回、手荷物検査の対象を平和記念公園全域に拡大し、拡声器やプラカードの持ち込むを禁止する措置を取る。

日本大危機管理学部の福田充教授は「集会の自由は非常に重い。戦前の言論統制の教訓を踏まえ、政治活動を中止したり排除したりすることはタブーとなっている」と指摘。一方、慰霊の日にそぐわない〝騒音集会〟を防げなかったこれまでの市の対応については、団体間の小競り合いが続いてきた経緯も踏まえ、「対立が深まり、負傷者が出ることは予想できたのではないか。打てる手は限られているが、対応が遅きに失した感は否めない」としている。

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