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トランプ氏銃撃でよぎった2年前の悪夢 警察庁が警戒徹底を緊急指示 問われる要人警護

産経ニュース / 2024年8月12日 6時0分

米大統領選を控えた7月、米共和党のドナルド・トランプ前大統領が集会で銃撃された事件は、警察庁内に緊張を走らせた。奇しくも安倍晋三元首相が選挙の応援演説中に凶弾に倒れてから2年。露木康浩長官が会見で「今後とも警護の高度化を図る」と決意を述べたばかりだったが、警察庁は47都道府県警に、改めて警戒の徹底を緊急指示。国政選挙などを控え「悪夢を繰り返さない」姿勢を鮮明にしている。

素早い対応

「信じられん…」。スマートフォンで「トランプ氏銃撃」の連絡を受けた警察庁の幹部は、こう絶句したという。

トランプ氏が銃撃されたのは7月13日(日本時間14日)。米東部ペンシルベニア州バトラーで、11月の大統領選で返り咲きを目指して演説中に撃たれ、右耳を負傷した。

警察庁の対応は素早く、街頭演説場所周辺の警戒と防弾資機材の活用の徹底を全国に指示した。9月には自民党総裁選があり、来年には参院選も控える。加えて、「いつ衆院の解散総選挙があるか分からない」(政府関係者)。

対岸の火事で済まされないとの意識が「海外の事件ながら異例の機敏な反応」(警察OB)につながったといえる。

引責辞任の残像

安倍元首相は令和4年7月8日午前、奈良市の近鉄・大和西大寺駅前で、参院選の応援演説中に手製銃で射殺された。事件を受けて警察庁長官の中村格氏が引責辞任。要人警護の基本方針を定めた法令『警護要則』が28年ぶりに抜本的に改訂された。

だが、事件から1年足らずの昨年4月、岸田文雄首相が和歌山市の漁港で、衆院補欠選の応援演説直前にパイプ爆弾を投げられる事件が発生。幸い岸田氏は無事だったが、改めて要人警護の問題が浮き彫りになった。

今年6月の定例記者会見で露木長官は「(安倍事件は)痛恨の極み。(岸田事件も)重く受け止めている」とした上で「警護中の要人襲撃はあってはならない」と強調。トランプ氏銃撃の4日後にあった定例会見でも「選挙運動に伴う警護は格段に危険度が増す現実を、改めて突き付けられた」と発言した。

警察庁首脳経験者は「前任の中村氏が失意のまま職を退くさまを目の当たりにしているだけに、露木氏のまぶたにも残像があるはずだ」と指摘する。

暴力団抗争は激減も

日本で銃などを使った犯罪といえば、暴力団などが絡む発砲事件が代表的だが、暴力団排除が進む中で抗争関連の発砲は激減している。

平成27年8月末に指定暴力団山口組(現・特定抗争指定暴力団山口組)が分裂。翌28年の発砲事件は全国で27件▽29年22件▽30年8件▽令和元年13件▽2年17件▽3年10件-と発生の抑止を維持。4年と5年はともに9件にとどまっている。

それだけに、2年前の安倍氏の事件や昨年5月に長野で4人が死亡した猟銃発砲事件、同6月に岐阜の陸自施設で3人が死傷した乱射事件は、社会に強い衝撃を残した。

米国では1981(昭和56)年にもロナルド・レーガン大統領(当時)が演説後を狙われ、銃弾で瀕死(ひんし)の重傷を負う事件が起きている。警視庁OBは「銃社会の米国から警護で学ぶべき点は多いが、生かせていない」と指摘した上で「露木長官が最も恐れているのはトランプ氏の事件に触発されたテロリストの出現だろう」と推察する。

過去の苦い教訓を糧に、要人警護を完遂できるか。注目される。

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