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精巧偽造書類携え、土地所有者に成りすます 逮捕された「地面師」ドラマさながらの手口

産経ニュース / 2024年11月25日 8時0分

知らぬ間に自分の土地が何者かによって勝手に売却される-。「地面師」と呼ばれる職業詐欺師集団による犯行を描いたドラマが話題を呼ぶ中、フィリピンに逃亡していた地面師グループの男が今月、警視庁捜査2課に逮捕された。明らかになったのは、精巧な偽造書類を用意し土地所有者や不動産仲介業者に成りすます、ドラマさながらの「だまし」の手口だった。

帰国、即逮捕

地面師とは、所有者に無断で土地を売却し、代金をだまし取る詐欺師を指す。バブル期や、2020東京五輪・パラリンピック前の地価高騰を背景に、東京都内を中心に暗躍した。

よく知られているのが、平成29年に積水ハウスが約55億円をだまし取られた事件だ。この経緯をモチーフにしたドラマ「地面師たち」が今年、動画配信大手ネットフリックスで配信されて人気を博し、広く存在を知られるようになった。

今回の「舞台」となったのは、横浜市都筑区の閑静な住宅地にある約250坪の土地だ。事件が起きた平成25年には草が茂る更地だったが、現在はマンションが建っている。

今月15日、詐欺と偽造有印公文書行使の疑いで捜査2課に逮捕されたのは、この日に成田空港に帰国した倉石三夫容疑者(71)。養子縁組を結んだ養父、倉石健一受刑者(74)をトップとする5人ほどの地面師グループの一員で、健一受刑者が摘発される前の令和元年、フィリピンへ逃亡していていた。

本物の紙に印刷し直す

事件の発端は、都筑区の土地を通りかかった健一受刑者が、この土地を「見初めた」ことだったという。そこから、入念な下準備が始まった。

ドラマでも言及されているように、地面師が犯行におよぶ際の「肝」となるのは、土地所有者の成りすまし役と、偽造した本人確認書類だ。成りすまし役は、健一受刑者自らが担当。三夫容疑者は、「所有者が土地を売りたがっている」という偽情報を不動産業者に流す、取引の仲介役を担った。

加えて、健一受刑者らの依頼で「ニンベン師」と呼ばれる偽造の職人が、印鑑証明書を偽造していた。捜査関係者によると、用紙は自治体などで取得できる本物で、特殊な技術で名前や印鑑などを緻密に削り取り、印刷、押印し直すという方法がとられていた。

こうして周到に準備された〝クモの巣〟にからめとられたのは、東京都内の不動産会社だった。平成25年12月、この会社の事務所で商談が行われ、健一受刑者らは土地の売却代金として、現金と小切手で1億2300万円をだまし取った。

土地の所有者と称する健一受刑者は、土地取得の経緯や周囲の景観など、本人しか知りえないような情報をよどみなく答えていった。詐取金のうち、三夫容疑者には少なくとも3千万円以上が配分されていたという。

確認に当たった司法書士も見抜けなかった鮮やかな手口だったが、犯行はあえなく露見する。「土地が売りに出る」という情報が流れた結果、本物の所有者のもとに売却意思確認などの問い合わせが殺到。危険を察知した所有者が法務局に不正登記防止を届け出たため、不動産会社の登記申請は却下された。

摘発と技術進化で低調に

かつては活発に活動していた地面師だが、捜査関係者によると、近年被害申告もほとんどなくなったという。ある警察幹部は「地面師の数は限られている。主だったメンバーはこれまでの捜査で逮捕、起訴され刑に服しており、やる人間がいなくなった」と分析する。

単なる紙でのやりとりだった本人確認書類も、ICチップが埋め込まれた免許証が登場し、手続きの電子化が進んだことで「ニンベン師」が暗躍する余地がなくなってきたことも背景にあるとみられる。

ある不動産関係者は、「地面師も戦後から時代に合わせて手口を進化させてきたが、いよいよやりづらくなったようだ」と話した。(外崎晃彦)

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