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「まるで独裁者が粛清する構図」「公開ハラスメント」「組織の他山の石に」斎藤兵庫県知事の告発者処分 専門家が厳しい指摘

産経ニュース / 2024年9月6日 10時2分

兵庫県の元西播磨県民局長(7月に死亡)が斎藤元彦知事らを告発した文書の内容を検証する県議会特別調査委員会(百条委員会)が5日開かれた。告発者の県民局長を公益通報の保護対象とせずに懲戒処分した妥当性を調査するために時間が割かれ、公益通報制度に詳しい上智大学の奥山俊宏教授が参考人として意見を述べた。主な内容は次の通り。

■攻撃の典型パターン

西播磨県民局長が解任されたことが新聞で報じられた3月28日から私はひとかたならぬ関心をこの件に抱き、事態の推移を注視してきました。

内部告発された側が、告発者に対して示す反応には一つの典型的なパターンがあります。告発者、なかでも、本質的で重要な不正について告発をした人は、たいてい、あること、ないこと織り交ぜて誇張され、人格攻撃にさらされる。これは日本に限った話ではなく、古今東西に見られる共通の現象です。内部告発が別の新たな内部告発を呼び起こすことが往々にしてあるが、そういうことがないように、告発者に悲惨な末路を押しつけ、見せしめにするのです。

8月30日のこの場での証人尋問で、斎藤知事は、その文書を作成したのが西播磨県民局長だと知ったときには「本当に悔しいつらい思い」があったと明かしています。3月27日の記者会見で西播磨県民局長に浴びせた「公務員失格」との言葉について先週の証人尋問で斎藤知事は、「その悲しいつらい思いから、やはりああいった表現ということをさせていただいた」とも認めています。

これらの知事の説明は、個人的な感情に突き動かされた末に、3月27日の記者会見での、あのような言動に及んだことを認めるも同然だと私には思えます。しかし、そういう感情に駆られて、県の行政府のトップである権力者が公の場で部下のいち個人に対していわば「公開ハラスメント」に及ぶ、ということは許されません。

さらに証人尋問で、斎藤知事は「誹謗中傷性の高い文書だというふうに私、県としては認識しました」というふうに述べました。「私として認識」と言いかけて、「県として認識」と言い換えています。しかしながら、この場合、「私」である斎藤元彦さん個人と、行政機関としての「県」を同視することはできません。行政機関としての県ならば、悔しかったり悲しかったりつらかったりすることはなく、そういう感情を抜きにして、バイアスなく冷静にあの文書を見定めなければなりません。兵庫県が誹謗中傷性が高い文書と認識してしまいそこからすべてをスタートさせてしまった理由は、そのまさに「認識」の担い手が、文書の内容と無関係の第三者ではなく、斎藤知事や副知事、総務部長ら、あの文書で告発の矛先をむけられている当人たちだったからです。

本来ならば、そういう人たちは、あの告発文書に関する県行政としての判断への関与から自ら忌避、身を引くべきだったと私は思います。なのに、真逆の行動を選んだ。だから、冷静な対応ができなかった。まるで独裁者が反対者を粛清するかのような陰惨な構図を描いてしまった、そう思われます。

■不利益扱いで違法

私のみますところ、今回の告発文書には様々な内容が含まれています。その真実性や真実相当性の程度は様々だと思われます。噂話程度の内容も含まれているのかもしれませんが、直接それを見聞きした人から聞き取って裏付けられていると思われる内容もあります。外形的な事実関係が大筋でおおむね正しいといえる内容が多々含まれています。意図的なウソ、虚偽は見当たらないように思われます。

軽々に全体的な印象、一部を切り取って「真実相当性なし」「公益通報に該当せず」と判断するのではなく、丁寧な判断が必要だった。あの段階、5月初旬、あの程度の状況で「公益通報」に当たらない、と判断したのは拙速に過ぎたというふうに、私にはそう思われます。

結果的に、告発文書には、法的に保護されるべき「公益通報」が含まれていることが今や明らかになっていると思われますので、知事らのふるまいは公益通報者保護法に違反し、告発者への不利益扱いは禁止されます。パソコンの押収、圧迫的な事情聴取、県民局長の解職、退職の保留、懲戒処分はすべて、公益通報者保護法に違反する不利益扱いで、違法ということになります。

■組織の「他山の石」に

この問題をめぐって、いま、世の中で多くの人が怒り、それはまるで沸騰しているようです。声を上げた男性職員の、たいへんに不幸な結末が、ほかの職員を萎縮させるのではないか、兵庫県庁だけでなく、日本中のあちこちの職場で働く多くの人たちをして、内部告発の声を上げづらくさせるのではないか、と心配する声があります。その結果、不正が放置されてしまいがちになってしまう恐れがあります。

その時立ち上がったのが、兵庫県議会であり、この特別委員会(百条委員会)であると思います。この特別委員会が真摯に対応しておられること、そのプロセスが模範となって、今後の日本社会で正当な内部告発が真剣に取り扱われることが当たり前となることを私は強く願っています。

斎藤知事は公益通報に関する基本的な知識の欠如と思い込みで、前時代的な対応をとってしまったが、斎藤知事に限らずすべての組織の上に立つ人間にとって他山の石にすべきだと思います。

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