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水上バイク、船舶エンジン…ロシアに不正輸出か、貿易会社社長を逮捕 韓国経由で40回

産経ニュース / 2024年7月10日 22時46分

軍事転用可能として輸出が規制されている水上バイクや船舶エンジンなどをロシアに不正輸出したとして、大阪府警は10日、外為法違反(無許可輸出)の疑いで、大阪市中央区の貿易会社「アストレード」社長でロシア国籍のソワ・アンドレイ容疑者(38)=大阪府吹田市=を逮捕した。ロシアによるウクライナ侵略に伴う経済制裁以降、不正輸出容疑での逮捕は初めて。制裁後、同社は韓国経由で約40回ロシアに物品を輸出したとみられ、府警は他にも違法取引があったとみて実態解明を進める。

逮捕容疑は昨年1月、経済産業相の許可を得ず水上バイク4台や船舶エンジン、トレーラー、中古バイク18台など約4300万円相当の物品を大阪・南港から、韓国・釜山を経由しロシア極東のウラジオストクの港へ不正輸出したとしている。ソワ容疑者は「弁護士と相談して話す」と供述しているという。

不正輸出は韓国の企業を経由し、ソワ容疑者が経営に関与するウラジオストクの会社に送るルートで繰り返されていたとみられる。府警は水上バイクなどが軍事転用された可能性や韓国企業の関与についても調べる。

日本政府はウクライナ侵略に伴い、ロシアに広範な経済制裁を実施。半導体や通信機器といった軍事転用が可能な物品や、産業基盤強化に資する物品などの輸出を禁止している。

制裁「抜け穴」性善説制度に課題も

ロシアに不正輸出したとして外為法違反容疑でロシア国籍の「アストレード」社長、ソワ・アンドレイ容疑者が逮捕された事件では、第三国を経由する迂回(うかい)ルートが「抜け穴」として利用された。ロシアのウクライナ侵略以降、日本など先進7カ国(G7)は広範囲に経済制裁を強め、ロシアの弱体化を狙う。ただ、中国など制裁に加わらない国による下支えに加え、第三国経由の不正輸出も後を絶たず、課題は山積している。

「今回は氷山の一角と認識している」。大阪府警幹部はこう話す。

ロシアへの輸出は、軍事転用が可能などとして、外為法に基づく輸出貿易管理令で品目などが厳しく規制されている。だが、輸出の許可申請については、事業者側が主体で行っており、いわば「性善説」に基づく制度なのが実態だ。

今回の事件で、ソワ容疑者はロシアへの不正輸出を隠し、韓国企業に輸出すると税関に申告していたことが判明した。捜査関係者は「外為法はいわゆる『ザル法』。虚偽の申告を捜査当局側がすぐに気づき、追跡調査するハードルは高い」と明かす。

「不正輸出は小さなリスクで大きな利益が得られるため、手を染める事業者は後を絶たない」。国際問題アナリストで元国連専門家パネル委員の古川勝久さんも「今回の摘発は重要な一歩」とした上で、不正輸出を巡る現状について懸念を示す。

古川さんによると、日本の製品は品質の高さから多くの国で需要が高い。ただ、仮に外為法違反に問われても「執行猶予にとどまるなど軽い罰則で済まされるケースが多く、甘くみている事業者もいるのではないか」とし、「資産凍結など厳しい罰則を設けるべきだ」と話す。

今回のアス社もウクライナ侵略でロシア国内の日本企業が軒並み事業を停止する状況を「ビジネスチャンス」と捉えたとみられる。アス社の売り上げは経済制裁前と比べて大幅にアップ。民間信用調査会社によると、令和5年3月期売り上げは約23億円で、前年の約2・5倍に膨らんだ。捜査関係者は「不正輸出をしてでも利益を得ようとしたのだろうが、軍事目的で使われた恐れもゼロではない」と話す。

また、古川さんは今回、迂回ルートとして韓国・釜山が選ばれていることに着目。釜山は不正輸出の経由地として、仲介役として暗躍する人材など密輸ネットワークが集積している場所だといい、「韓国側とも協力して、関係者全てに包括的に制裁を与えなければならない」と指摘する。すでにロシア軍の兵器に日本製品が使われた事例もあり「製品にかかわらずロシアとの取引自体を全面禁止すべきだ」と訴えた。(有川真理、鈴木文也)

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