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罪に問えない「心神喪失者」 被害者・遺族への情報開示不十分、通常事件と「格差」も

産経ニュース / 2024年7月20日 20時43分

医療観察法の運用の問題点などを取り上げたシンポジウム=6月25日、東京都千代田区(内田優作撮影)

殺人などの重大犯罪を起こした者が精神障害などを理由に刑事責任能力がないとみなされる「心神喪失」。通常の刑事事件と異なり、被害者や遺族には事件や加害者の情報が十分に開示されず、裁判も開かれないため意見表明の場も与えられない。関係者は現行制度の不備を訴えている。

「通常事件の被害者や遺族と比べて、大きな格差がある」

6月25日に東京都内で開かれた、犯罪被害者や遺族らでつくる「医療観察法と被害者の会(がじゅもりの会)」主催のシンポジウム。同会の濱口文歌弁護士は、心神喪失などと認められた重大事件の加害者の医療的な処遇などを定める医療観察法の運用の問題点について、こう指摘した。

鑑定留置で心神喪失や心神耗弱とされた者は、通常の刑事裁判の「被告人」ではなく、指定医療機関への入院や通院治療の可否といった処遇を決める医療審判の「対象者」として社会復帰を目指すことになる。

元大阪高裁判事の村山浩昭弁護士は、医療審判は刑事裁判に比べて事実の審理に重きが置かれていないと指摘。審判後に入院した心神喪失者らの退院許可が、書面で行われることが多いなどと実情を明かし、「被害者には歯がゆいところもあると思う」と話した。

特に被害者・遺族の不満が大きいのは、加害者となった心神喪失者らに関する情報開示が、プライバシー保護の観点などから十分に行われていないことだ。

医療観察法に基づき処遇される患者を扱う国立精神・神経医療研究センター病院の鈴木敬生・主任心理療法士は「謝罪の意思を示す対象者も多い。一定の準備をした上で、情報を共有したり、謝罪する場を設定したりすることは、双方に前向きな結果をもたらす可能性もある」とした。

昨年12月から、被害者や遺族が希望した場合、加害者の処遇の段階や終了といった情報を、継続的に通知するようになった。

ただ、がじゅもりの会代表で、平成31年に児童養護施設の施設長だった夫=当時(46)=を元入所者の男に殺害された大森真理子さん(57)は改善を評価する一方、「事件で何があったのか分からないことで苦しむこともある。知ることで、納得できなくても前に進むことはある」と支援は不十分と指摘した。(内田優作)

心神喪失

精神疾患で自らの行為の善悪を判断できないか、判断できても行動を制御できない状態。刑法39条で刑罰を科さないと定められており、重大事件の加害者であった場合は、医療観察法に基づき、指定された医療機関に入院するなどの処遇をされる。病状が心神喪失まで至らない「心神耗弱者」は刑が減軽される。

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