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犯罪誘発するネットの銃情報、規制手探り 改正銃刀法成立 安倍元首相銃撃2年

産経ニュース / 2024年7月8日 22時6分

8日で発生から2年となった安倍晋三元首相銃撃事件では、山上徹也被告(43)=殺人罪などで起訴=がインターネット上の情報を基に銃を自作していたとされる。政府は銃器関連情報の拡散に歯止めをかけるため、先の国会で銃刀法を改正。ネット上などで銃所持をあおるような行為を罰則対象としたが、匿名性の高い闇サイトを含め、犯罪を誘発する有害情報を取り締まるのは容易ではない。

令和4年7月の参院選に際し、奈良市で街頭演説中の安倍氏を襲ったのは、金属製の筒を複数組み合わせた長さ約40センチ、高さ約20センチの手製銃だった。

奈良県警は山上被告の自宅から犯行に使われたものと酷似した手製銃数丁とともに、はかりや工具類、ミキサーなどを押収した。被告はインターネット動画などを参考に銃を自作したとされる。

事件後、警察当局は規制を強化した。銃刀法で規制する「銃砲」は「拳銃等」「猟銃」「その他装薬銃砲など」の3類型に分けられ、法定刑の上限が無期懲役の発射罪を適用するのは、これまで拳銃等に限定。事件で押収された手製銃7丁のうち6丁は拳銃等、1丁はその他装薬銃砲などに分類されたことから、先の国会で成立し、今月14日から施行される改正法では、発射罪の適用範囲を全てに拡大した。

猟銃やその他装薬銃砲などの所持罪も人の殺傷を目的とした場合、罰則を拳銃等と同じ「懲役1年以上10年以下」と重くした。

また改正法では、不特定多数に向けて銃の製造方法を解説した動画を投稿したり、「拳銃を販売する」などとうたって価格を示したりする行為に「1年以下の懲役または30万円以下の罰金」を科すとした。

ただ銃の製造方法が闇サイト「ダークウェブ」などですでに拡散されている可能性もある。有害情報は海外のプロバイダーなどを通じて発信されているケースも多い。

日本大危機管理学部の福田充教授は「国内から発信された投稿への抑止力は期待できるが、海外サイトまでの規制は難しい」と指摘。「ダークウェブなどでのやり取りは発信元の特定が困難だ。警察組織の限られた人員では取り締まりにも限界がある」と話した。

ある警察幹部は法改正について「不用意な情報の発信はしづらくなるため、一定の効果は期待できる」としつつ「闇サイトでは証拠がすぐに消えてしまうケースもあり、難しい部分もある。サイバー捜査や広報啓発にも一層力を入れなければならない」と強調した。

事件機に相次ぎ厳格化

銃刀法を巡っては過去にも、規制対象外の刃物などを凶器とした重大事件の発生を契機に、銃やナイフなどの規制を強化する法改正が相次いで行われてきた。

今回の改正では、インターネット上で銃所持をあおる行為への罰則を新設。加えて、令和5年5月に長野県で警察官が猟銃などによって殺害された事件を受け、ハーフライフルについては、より射程が長いライフルと同程度に所持許可の基準を厳格化した。また電磁石の磁力で弾丸を発射する「電磁石銃」(コイルガン)の所持が原則禁止となるため、警視庁は無償で回収している。

過去にも事件が契機となって規制強化が行われている。平成20年6月8日に東京・秋葉原の歩行者天国で7人が死亡し、10人が重軽傷を負った無差別殺傷事件では、刃渡り約13センチの両刃のダガーナイフが凶器として使用された。警察庁は短刀の規制を検討し、事件翌年の21年1月、刃渡り5・5センチ以上の両刃の刃物を所持することを禁じる改正銃刀法が施行された。

また、令和2年6月に兵庫県宝塚市で4人が殺傷されるなど、クロスボウ(洋弓銃)が凶器となる事件が続発したことを受け、4年3月に改正銃刀法が施行された。それまで銃刀法で規制対象外だったクロスボウの所持が原則禁止となり、都道府県公安委員会の許可を受けなければ持っているだけで違法となった。

(藤木祥平、中井芳野、大渡美咲)

国際的枠組み必要 東京都立大の星周一郎教授(刑法)

改正銃刀法で、銃の製造・所持をインターネット上で不特定多数にあおる行為が、規制されることになった。爆発物や火薬の製造については対象外だが、規制に関わる武器等製造法や火薬類取締法などは関連業界に安全の確保を求めるもので、犯罪捜査を目的としていない。爆発物や火薬に関するネット上の投稿についても、銃刀法で一括して規制対象とすべきだ。

銃や爆発物の製造情報を巡っては近年、ネット上で情報を集めて質問に回答する生成人工知能(AI)に対する懸念も高まっている。生成AIの悪用を各国が単独で規制するのは難しく、運営側の自主規制にとどまっており、違法薬物や児童ポルノと同様に国際的な規制の枠組みが必要だ。

欧州連合(EU)では5月、世界で初めて包括的にAIを規制する法律が成立し、リスクに応じてAIを分類して利用を禁じたり、監視したりする規定ができた。こうした国際的な規制の実効性を高めるためには、巨大IT企業を抱える米国の加盟が欠かせない。各国がテロ対策をてこに、国際的な協調関係を築く必要がある。(聞き手 山本考志)

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