悪質ホスト、行政処分と摘発の2段階で規制へ 「立ちんぼで稼いでいる子いる」誘導も禁止
産経ニュース / 2025年1月8日 19時2分
支払い能力を超える多額の売掛金(ツケ)を女性客に強いるなどの悪質ホストの問題で、警察庁は、規制に向けた最終調整に入っている。今月24日に召集予定の通常国会に悪質な取り立てを規制するなどを柱とする風営法改正案の提出を目指しており、早期に成立させたい考えだ。関係団体からは抑止力に期待の声があがるが、悪質な行為の線引きが明確ではないとする懸念も浮上している。
2段階で規制
警察庁は昨年7月、法律家や社交飲食業組合幹部らを委員とする対策検討会を立ち上げ、議論を重ねた。12月に報告書を公表し、風営法改正原案の調整を進めている。
報告書では、通常の飲食店などで見られるツケの慣習自体や、ホスト業界に限定したツケの規制は見送られたものの、悪質なものについては規制する方向性が示された。
悪質な行為は、営業禁止といった行政処分の対象となる「順守行為」と摘発対象となる「禁止行為」の2段階を設定。
料金の虚偽説明や恋愛感情につけ込んだ高額注文、正常な判断がつかない状態での高額な飲食などは、順守事項として規制するという。
入店時に「3000円ぽっきり」としたが、実際は高額な料金を請求するケースや、「シャンパンを入れてくれないと関係は終わり」とホストがちらつかせることなどが想定されるという。
売春誘導も禁止に
一方、脅迫などを用いた悪質なツケの取り立てや、ツケの支払いのために売春や性風俗店で働くことを求める行為は禁止行為として取り締まりの対象となる。
これまでも売春の強要は摘発対象だったが、脅すなどの強制性がなければ立件が難しいという課題があり、一律に取り締まる規定を設ける方針だという。「立ちんぼで稼いでいる子もいっぱいいる」といった売春などに誘導する行為も禁止行為に加わる見通しだ。
加えて、性風俗店が女性を紹介したホストやスカウトに紹介料(スカウトバック)を支払うことも禁じる。
罰則の実効性を持たせる「策」も検討されている。
現行の風営法では、最も重い罰則は無許可営業などで、罰金の場合はホスト個人や店側に上限200万円の支払いを求める。ただ、この上限額では「一日の店の売り上げにもならない」とされており、警察庁は億単位への引き上げも模索する方針だ。
懸念もある。規制対象となる恋愛感情をちらつかせる行為や、売春の誘導というものは、あいまいなケースも出てくるとみられている。被害者支援団体「青少年を守る父母の連絡協議会」の田中芳秀事務局長もこの点を指摘。「(改正法で)抑止力は大きくなるが、実効性を持たせるためにも『線引き』を言語化してほしい」と訴えている。(橋本愛)
◇
佐藤みのり弁護士の話「規制対象絞る必要、実効性に難しさも」
これまで女性の自己責任と片付けられがちだったホストにまつわる問題が悪質なビジネスモデルであり、国が介入しなければならないという認識に変わったことは、対策に向けた一歩と評価できる。
一方で法規制をするためには、対象の行為を明確に絞る必要がある。
特に、恋愛感情につけ込む行為については、女性が恋愛ではなく「『推し』を勝たせたい」と考えている場合、対象外となる可能性があるなど、実効性を持たせられるのかが課題だ。
また、スカウト行為は現在も違法だが根絶されておらず、紹介料を規制しても、取り締まりが徹底されなければ効果は十分ではないだろう。
法規制だけでの対策では、悪質な店側が網をかいくぐって、いたちごっことなることも考えられる。孤独を感じる女性がつながった先がホストで「ここだけが居場所」と思い込んで離れなくなる場合もあるため、規制強化に加えて女性を適切な支援につなげる行政や民間のサポートも必要だ。
◇
警察への相談は増加傾向
ホストクラブに関する被害などの相談は、年々増加傾向にある。
警察庁によると、全国の警察が受理した相談件数は、統計を取り始めた令和3年は2044件だったが、5年は2675件にまで増加した。
多額の売掛金が社会問題となり、東京・新宿歌舞伎町の主要店では昨年4月から売掛金を廃止する自主規制に乗り出したが、その後も〝トラブル〟は続く。被害者支援団体などによると、売掛金に代わり、前払いなどと名称を変えた手口で高額な借金を強いるケースもあるという。
警察庁によると、6年の被害相談も10月末までに2362件と、5年と同等か、増加が見込まれる状態だという。
相談の中には、«知らない間にシャンパンを注文された»«路上で売春の客待ちをする「立ちんぼ」をするように言われた»などの悪質なケースもあったとされる。
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