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「未来の被害者を減らす」府民の経済活動を守る強い気持ち 大阪府警の末松良典警部補

産経ニュース / 2024年11月25日 18時47分

「近畿の警察官」に選ばれた守口署生活安全課の末松良典警部補(木津悠介撮影)

近畿2府4県の優秀な警察官をたたえる第138回「近畿の警察官」(産経新聞社提唱、大阪府信用金庫協会など協賛)に、大阪府警から守口署生活安全課の末松良典警部補(50)が選ばれた。32年の警察官人生のうち、約20年を生活安全部門で過ごし、市民の暮らしをむしばむヤミ金融や違法な悪質訪問販売といった生活経済犯罪の摘発に尽力した。表彰式は11月27日、大阪国際交流センター(大阪市天王寺区)で行われる。

「しんどいけど、やりがいのある仕事だよ」。高校時代、柔道の練習試合で出会う警察官にあこがれ、この道を志した。

平成4年、府警に採用後は交番や警察署での勤務を経て、府警本部生活安全部生活経済課に配属された。悪質商法や投資詐欺、偽ブランド品…。生活に密着した犯罪を摘発し、府民の経済活動の安全を守る砦(とりで)となる部署だ。

15年6月のこと。八尾市の主婦と夫ら親族3人がヤミ金融業者による法外な利息と苛烈な取り立てを苦にした末、踏切で心中する事件が起こった。当時は長引く不況で自己破産者などに高金利で現金を貸すヤミ金融業者がはびこっていた時代で、悲惨な事件は社会に衝撃を与えた。

このヤミ金融業者の捜査に当たったのが末松さんら府警生活経済課員だ。那覇市にあるグループの拠点を特定し、18年2月、120人態勢で拠点を急襲。メンバー24人を逮捕した大捕物だった。

多数の容疑者がバラバラの供述をするなかで、末松さんが取り調べたのは20代の男。はじめは「組織に入って1カ月の新人で何も知らん」とそっけない対応だった。だが、組織のリーダー格をあだ名で呼ぶことに違和感を持ち、証拠資料との矛盾を突く、ねばり強い取り調べを継続した。

「組織から離れるには、今しかないよ」。親身に問いかける末松さんの調べに男の心は徐々に揺らぎ、ついにある日―。「すみません、噓をついていました。本当のことを話します」。男は詳細に語り始め、全容解明の糸口となった。

令和2年には、支給前の給与を債権として買い取り、先に現金を渡す新たなヤミ金融の手口「給与ファクタリング」を全国で初めて摘発。悪質な業者は、時代に合わせて巧妙に運営実態を変える。「事件化して判例をつくれば、未来の被害者を減らすことにつながる。過去に前例がなくてもチャレンジすることが大切だ」。こう力を込める。

忙しい捜査の合間は、趣味の魚釣りなどで英気を養う。日本海でイカ釣りに挑戦したことも。「大物が釣れるとうれしいですね」。眼光鋭い捜査員の顔が、ふと和らいだ。(木津悠介)

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