注目が利益に…「アテンションエコノミー」の弊害か つばさの党、動画は次第に過激化
産経ニュース / 2024年6月11日 21時51分
衆院東京15区補欠選挙を巡る選挙妨害事件で、公選法違反容疑で再逮捕された政治団体「つばさの党」代表の黒川敦彦容疑者(45)らは、動画配信をしながら、他陣営の選挙カーの現在地情報を視聴者にリアルタイムで募り、追跡していた。黒川容疑者らが公開した動画は補選期間中の12日間だけでも約40本に上った。内容も次第に過激化しており、これを歓迎して「投げ銭」と呼ばれる送金をする視聴者もいた。専門家は、人々の注目や関心を集めて経済的な利益につなげる「アテンションエコノミー」が引き起こす弊害が出ていると指摘する。
「ヘイヘイヘイ」「売国奴、売国奴…」
テンポの良いリズミカルな口調で、他の候補者らを罵倒する音声が、つばさの党の選挙カーから繰り返し流される。
黒川容疑者らはその一部始終を動画で撮影し、視聴者にリアルタイムで配信。主なプラットフォームは、ユーチューブだ。
選挙期間(4月16日から投開票前日の27日)のライブ配信動画は1日平均3本以上にものぼり、10時間を超す長時間の動画もあった。
「ビジネスに」
「選挙期間中に行動をエスカレートさせていったのは間違いない」
捜査関係者は、黒川容疑者の妨害行為の変遷について、こう分析する。
黒川容疑者らが、他陣営の選挙カーを追跡する「カーチェイス」と称する行動を最初にとったのは、4月17日だ。その際はつばさの党から出馬した根本良輔容疑者(29)が、マイクを使った肉声で罵声を浴びせていた。一方、20日には音声を録音で流し、リズミカルな語調にしたり、より過激な内容にしたりと手法を洗練させていった。
動画の中では、「(その時点の視聴者数が)5000人を超えています!」などと興奮した様子も。根本容疑者は「広告収入が増えているので配信をビジネス化したい」と意気込んでいた。
「収益化制限を」
「アテンション(注目)」という言葉を冠して使われるアテンションエコノミーと呼ばれる概念では、情報の優劣ではなく、関心を集めるかどうかが経済的な価値を持つとされる。ユーチューブやX(旧ツイッター)など、動画の再生数や投稿のインプレッション数(表示回数)などに応じて現金が支払われる仕組みがこれに当たる。
6月20日告示、7月7日投開票の東京都知事選では、出馬に必要な資料を都選挙管理委員会に受け取りに来た陣営が60以上に上っている。そのため、今回は過去最多の立候補者数となった令和2年の22人を大幅に上回る乱立選挙となる恐れがある。多くは知名度向上や、注目を集めて収益につなげる狙いがあるとみられている。
「人々のアテンションを換算してお金をもらえる仕組みができたことで、選挙を通じて自らの活動資金を獲得しようとする動きが出てきた」。慶応大法学部の大屋雄裕教授(法哲学)は、こう警鐘を鳴らす。
アクセスを稼ぐために動画が過激化するのは、「迷惑系ユーチューバー」と同じ構図だ。大屋教授は「迷惑系ユーチューバーの活動が終息したのは、運営側が動画の収益化を止めたから」と指摘。「選挙運動に関する動画を収益化させない仕組みが必要になるのではないか」と提言している。(外崎晃彦)
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
つばさの党、動画配信中に他陣営の現在地情報募る 視聴者に「書き込みを」 選挙妨害事件
産経ニュース / 2024年6月11日 20時34分
-
選挙カー「偶然」見つけ追尾 再逮捕のつばさの党代表ら
共同通信 / 2024年6月8日 4時23分
-
「つばさの党」代表ら再逮捕 立民酒井氏陣営の活動妨害疑い
共同通信 / 2024年6月7日 14時38分
-
つばさの党代表ら再逮捕へ 選挙カー追尾で立件は異例
共同通信 / 2024年6月7日 5時11分
-
立花孝志氏 つばさの党・黒川敦彦容疑者の都知事選での妨害活動「やったら現行犯逮捕」私人逮捕も予告
よろず~ニュース / 2024年5月24日 19時30分
ランキング
-
1政府、水道水のPFAS全国調査 汚染の実態確認へ
共同通信 / 2024年6月22日 21時12分
-
2「平和の光の柱」上空に 沖縄慰霊の日前夜祭 遺族らが黙とう
毎日新聞 / 2024年6月22日 20時4分
-
3電車運転中にスマホ確認 阪神、乗客の指摘で発覚
産経ニュース / 2024年6月22日 22時2分
-
4別人映像を容疑者と報道 テレビ北海道、高校生殺人
共同通信 / 2024年6月23日 8時29分
-
5「スマホ脳疲労」もの忘れ・うつの原因に……脳神経専門医オススメ“スマホ3か条”で早期改善へ『every.16時特集』
日テレNEWS NNN / 2024年6月22日 17時59分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください