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売春指示され、大久保公園で立ちんぼ…〝無間地獄〟に「捕まえてくれてありがとう」 深層 歌舞伎町

産経ニュース / 2024年12月4日 14時15分

売春を行っていたことや支援を受けた経験について話すアヤカさん(仮名)

「警察の方に『洗脳状態だったんじゃないか』と言われて。その通りだなと思いました」

アヤカさん(29)=仮名=は昨秋、東京・歌舞伎町の大久保公園周辺で、売春目的で男性を待つ「立ちんぼ」を行い、警視庁に逮捕された。交流サイト(SNS)で知り合った男性に売春を指示され、カネを搾取されていたアヤカさん。「その人のために稼がなきゃと思っていた。普通の心境ではなかった」と振り返る。

威圧され言いなりに

男性と知り合ったのは約2年前。飲食店で勤務する傍ら、好きなアーティストの地方でのライブに行く費用などを稼ぐため、X(旧ツイッター)で「パパ活」募集をする中で会った相手だった。男性はパパ活を協力して行うことを提案。男性が女性の代わりに投稿やメッセージのやりとりを行い、女性が客とホテルに入っている間にも次の客の約束を取り付けるというものだった。稼ぎは折半だが「2倍稼げる」と言われ、応じてしまった。

男性は無職。アヤカさんの家に住みつき、次第に生活を管理するようになった。稼働時間を増やすため起床時間などを細かく決め、気に障ることがあると髪をつかんで頭を床にたたきつけ、馬乗りになって首を絞めた。売春の出張や立ちんぼも行うようになり、仕事は辞めさせられた。

プライドを奪ったのは、「高卒のお前はこんなことでしか稼げない」との言葉だった。経済的に大学進学が難しく、高校卒業後に就職したアヤカさん。「『早く卒業して自分も稼がなきゃ』と思って社会に出たが、自分はだめなんだと思うようになっていった」

限界での逮捕

転機となったのは、立ちんぼ行為で一度、逮捕されたことだった。釈放後も立ちんぼをするよう指示されたが、「また捕まると思った」。稼ぎの全額を持って行かれるようになり、毎朝起きては歌舞伎町に行く生活が続いた。

そして昨秋、アヤカさんは歌舞伎町のホテルに入ろうとしたところで2度目の逮捕をされた。「やっと解放される。よかった」。安心して体の力が抜け、「捕まえてくれてありがとうございます」と言葉がこぼれた。

最初の逮捕で黙っていた男性のことも、全て話した。女性警察官から「まだ若いんだからやり直せる」と言われた。アヤカさんは紹介された自治体の支援を受け、シェルターに避難。一時的な生活保護の申請や家探しを始めた。役所で求人票を見たりパソコンの講習を受けたりし、面接を経て事務の仕事に就いた。

「支援を受けられると知らなかった。今は仕事を見つけることもでき、友人にも、警察や役所の方にもお世話になった」。将来に向け、歩みだしたアヤカさん。

「当時の自分には、『すぐ相談しな。絶対やり直せるから』と声をかけたい」

メンタル崩壊で負の連鎖

「売春が犯罪と考えず、安易に立ちに来る子も多い。『犯罪者になっているんだよ』と、よくよく話をします」。警視庁保安課で売春の取り締まりや更生支援を行い、アヤカさんの取り調べも担当した女性捜査員は話す。

「『抵抗があるのは1回か2回で、それを超えると何も感じなくなる』という子もいる。でも実際は嫌だけどお金が必要、というジレンマに陥ってメンタルを壊す人がとても多い」。今夏には、ホテルで刃物を突き付けて「殺す」と脅したり現金を奪うなどした男が摘発されるなど、密室で危害を加えられる恐れもある。

「売春は精神に不調をきたし、社会にもなじめなくなって負の連鎖に陥る」と女性捜査員。留置時の面会などを通じ、警察から行政の福祉事務所や弁護士につなぐ支援を提案するが、すくい取りきれないのが現状だ。「逮捕されたのをきっかけとして、30代、40代になったらどうするのか、先を見て今を生きていくよう伝えている」と話した。(橋本愛)

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