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愛犬チロの敵・・・身勝手な動機で元厚生次官らを連続殺傷 警視庁150年 129/150

産経ニュース / 2024年12月5日 7時0分

平成20年11月18日午前、元厚生事務次官の男性=当時(66)=と妻=同(61)=が、さいたま市の自宅玄関で胸から血を流して死亡しているのが見つかった。夜には東京都中野区の別の元厚生事務次官方で、妻=同(72)=が宅配便を装った男に胸などを刺され重傷を負った。

狙われた元厚生事務次官2人は「年金のプロ」として、現行の基礎年金制度の創設に深く関与するなど共通項が多かった。19年2月には、社保庁で基礎年金番号に未統合の記録が約5千万件ある「消えた年金問題」が発覚したことから、「年金テロ」も疑われた。ホームページから厚労省幹部の名簿が削除されるなど、不安は広がった。

警視庁と埼玉県警の捜査が進む中、4日後の22日夜、東京都千代田区霞が関の警視庁本部に、男が車で乗り付け、「おれが事務次官を殺した」と出頭。逮捕された小泉毅死刑囚=当時(46)=は「34年前に保健所に殺された、飼い犬の敵を討ちたかった」と、子供の頃に殺処分された愛犬チロのあだ討ちだと供述。インターネットや国会図書館で厚生省名鑑などを見て、元次官らの名前や住所を調べ、ほかの元厚生次官も狙っていたことも判明した。

公判などで明らかになったのは小泉死刑囚の身勝手な動機だった。会社を退社後、株取引などで生活し、50歳になったらできるだけ多くの元厚生次官を殺害して死刑になりたいと考えたという。東京高裁は「『愛犬のあだ討ち』は犯行の口実として脚色された疑いが強い」と批判。26年6月に死刑が確定した。(大渡美咲)

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