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似顔絵捜査「同じ顔の男がいた!」 大阪府警鑑識課の専従係、デジタル時代も技術伝承

産経ニュース / 2024年7月23日 12時0分

若手警察官に似顔絵の技術を伝える大阪府警鑑識課の首藤和正警部補(中央)=6月、府警本部(鳥越瑞絵撮影)

ときに事件の犯人や行方不明者発見の決め手となる似顔絵は、デジタル時代においても重要な捜査手法だ。大阪府警では令和2年春から全国でも珍しい似顔絵捜査専従の係を鑑識課内に置く。目撃者の記憶が頼りの似顔絵作成は時間との勝負でもあり、必要とあらばすぐに目撃者の元へ駆けつける。「似顔絵はセンスではなく技術」。そう話す係の首藤(しゅとう)和正警部補(43)は後進育成にも力を入れている。

あえて漠然と聞く

6月、府警本部。似顔絵捜査員認定のための講習会で、講師を務めた首藤さんは警察署の若手ら約20人に似顔絵作成の心得を説明した。

目撃者への最初の質問で重要なのは、記憶の中で最も印象に残っている部分を引き出すこと。そのため「『犯人』はどんな人でしたか?」と、あえて漠然とした聞き方にするといった具合だ。

大阪府警には現在1015人の似顔絵捜査員がいるが、大半は警察署の地域課や交通課に所属する若手で、パトロールなどの〝本業〟をしながら事件発生などに備えている。専従は、似顔絵係の捜査員4人だ。

万引、痴漢、ストーカー…。鑑識課が扱うデータベースには日々発生した事件の概要が集約される。似顔絵係の捜査員は毎朝、データベースで目撃情報の有無を確認し、情報が得られる場合は聞き取りへ向かう。

鑑識課幹部は「専従だからこそ、きめ細かい対応ができる」とし、「似顔絵作成能力の向上は初動捜査力の強化につながる。対応できる警察官を増やしたい」と話す。

センスではなく技術

似顔絵作成の要諦は、センスや絵心ではない。目撃者の記憶を質問で丹念に引き出し、特徴を絵に落とし込む技術だ。

分からない部分は無理に描かず、体のタトゥーや服装、アクセサリーの特徴があれば盛り込む。「被害者に何度も嫌な記憶を思い出させたくない」。首藤さんはそうした配慮から約40分で作成することを心がける。

平成25年に府警本部鑑識課に配属されてから100件超の事件で、約200枚の似顔絵を描き上げてきた首藤さん。捜査に関わった事件の一つが27年5月、当時10歳の小学生女児を狙った強制わいせつ事件だ。

被害に遭ったばかりの女児は恐怖で緊張していた。母親同席のもと、誘導はせず女児が話してくれるのを待った。「丸い顔で細い目、そばかすがあって…」。勇気を出して説明する女児の心に負荷をかけないよう、ゆっくりと問いかけ、徐々に記憶をたどっていった。

1週間後、似顔絵をもとに捜査員が警戒していると、そっくりの男を見つけ、逮捕につながった。「『似顔絵と同じ顔の男がいた』といわれたときは報われた気分だった」と振り返る。

遺体からの推定作成も

似顔絵の技術が必要とされるのは事件だけではない。府警のホームページでは、身元不明の遺体から生前を推定して作った似顔絵を掲載し、遺族から連絡を受けることも少なくない。今年からは大阪地検と協力し、裁判員裁判で示す凄惨(せいさん)な遺体など「刺激証拠」のイラスト化も担っている。

昨年から警察署で「出張授業」を始め、今月は大阪府警察学校で特別講義を行った首藤さん。「似顔絵作成は訓練で習得する鑑識技術。警察学校のカリキュラムに加えて全ての警察官に知ってもらいたい」と力を込めた。(鈴木源也)

似顔絵捜査員 大阪府警の場合、毎年2月と6月に行われる講習会を受講すると似顔絵捜査員に認定される。1月に行われる検定試験や実技試験に合格すると、より専門性が高く、刑事部長が指定する捜査用似顔絵技能員の資格を得られる。技能員は現在332人。技術をさらに高めるため年1回、美術家や骨格構造の専門家を招いた実技講習も行われる。

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