「マンホールからあふれる可能性も」埼玉・八潮の陥没事故、120万人に下水使用制限
産経ニュース / 2025年1月29日 17時6分
埼玉県八潮市の県道交差点で陥没した道路にトラックが転落した事故は、29日も運転手の救助作業が続いた。陥没原因は県道下に埋設されている下水管が破損したためとみられている。この事故で県はこの下水管を利用している12自治体に下水の利用制限を呼び掛けており、影響は12市町の計約120万人に及んでいる。
転落男性の救助難航
県警によると、事故があったのは28日午前9時50分ごろ。八潮市二丁目の県道交差点で縦約10メートル、深さ約10メートルの穴が開き、走行中のトラックが転落した。
消防はクレーン車などを使って男性運転手の救助作業を行っているが、穴の内部の様子が分からないこともあり、難航している。作業中の29日午前1時10分ごろには近くに新たな深さ約5メートルの陥没ができた。
新たな陥没付近にはガス管が通っており、八潮市は29日未明、ガス漏出の危険性があるため付近の住民約200世帯に避難指示を出している。八潮市役所に避難していた現場近くのアパートに住む男性会社員(24)は「一体いつまで避難すればいいのか」と不安な様子だった。
現場は下水処理場に近く、地下約10メートルに直径約5メートルの下水管が埋設されていた。県によると、これほど太い管が使われているのは、上流自治体からの下水を処理場に送る重要部分に当たるためだという。
県によると、この事故で下水管に大量の土砂が流入し、一時ほぼ流れない状況になった。このため、県は八潮市や草加市など12市町に下水の使用制限を呼び掛けている。
下水の復旧時期は未定で、県は「使用を続ければ管が下水でいっぱいになり、マンホールからあふれる可能性もある」と危機感を強めている。
県は29日、緊急の対策会議を開き対応を協議。会議後、大野元裕知事は「現場への流量を抑える必要がある。洗濯やお風呂の使用を控えてほしい」と訴えた。
進む老朽化
県によると、この下水管は42年前に使用開始されたもの。県は下水管の耐用年数をおおむね50年としており、耐用年数間近だった。
県は5年ごとに下水管の定期検査を実施。問題の下水管は令和3年度冬に目視検査していた。このときは一部に腐食が見られたが、すぐに補修が必要とは判断されていなかった。
県南部は人口が急増した昭和40~50年代に下水道が急速に普及し、耐用年数が近づいている。ただ、予算の問題などもあり、一気に取り換えるのは困難だ。県は「下水管の中には硫化水素が発生して耐用年数に達しなくても問題が生じることもある。このため、優先度をつけて取り組んでいる」としている。
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