災害弱者の事前避難など念頭、専門家会合の判断が鍵 南海トラフ地震臨時情報
産経ニュース / 2024年8月8日 18時8分
気象庁が8日に初めて発表した「南海トラフ地震臨時情報」は、近い将来の発生が懸念される南海トラフ巨大地震を念頭に、想定震源域付近でマグニチュード(M)6・8以上(速報値)の地震が起きた場合などに出される。特に高齢者や障害者などの災害弱者が、事前に少しでも安全な場所に避難できるようにする。現体制での運用は令和元年5月に始まった。
南海トラフは、東海から九州地方にかけての太平洋側に延びる浅い海溝で、日本列島が乗る陸側プレート(岩盤)の下に、南からフィリピン海プレートが沈み込んでいる。両プレートの境界がすべることで、M8級以上の巨大地震が繰り返されてきた。
政府は過去の発生間隔などから、今後30年以内に70~80%の確率で起きると予測。想定する死者・行方不明者数は、最悪の場合で約32万3000人に達する。
臨時情報は、想定震源域や南海トラフ沿いで速報値がM6・8以上の地震が発生するか、地殻変動の観測装置で「検討が必要な変化」を観測した場合などに、まず最初の臨時情報「調査中」が発表される。
直後に気象庁の専門家会合が開かれ、速報値よりも正確なマグニチュードを基におおむね、M8・0以上の地震発生時は「巨大地震警戒」▽M7・0以上の地震発生時か、プレート境界で通常と異なる「ゆっくりすべり」(揺れを感じない程度の地殻変動)が発生した場合は「巨大地震注意」▽それ以外は「調査終了」―の臨時情報が、それぞれ発表される。
南海トラフでは、M7級の地震が先に起きて巨大地震を誘発した事例はまだ確認されていない。一方、平成23年の東日本大震災(M9・0)では確認されていることから「巨大地震注意」を採用した。
一方、南海トラフ巨大地震は想定震源域が広大なため、一度に全域でプレート境界がずれ動くとはかぎらない。過去の事例にならえば、例えば東半分が動いてM8級の地震が起き、時間を置いて西半分が動いて別の大きな地震が続く可能性もある。「巨大地震警戒」はこうしたケースを念頭に置いている。
さらには、臨時情報が出なくても、巨大地震が突然発生する可能性は十分にあることも忘れてはならない。
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