阪神大震災で浸透の「活断層」 研究30年の東北大・遠田晋次教授「丹念な再検証も必要」
産経ニュース / 2025年1月18日 16時42分
17日で発生30年となった阪神大震災は、「活断層」という言葉を広く浸透させたことでも知られる。政府は、大震災を教訓に、防災対策などへの科学的知見の活用を重視し、地震が発生する確率の長期予測(長期評価)などを公表するようになった。研究者は、この30年で活断層の科学的な理解は徐々に進展してきたと評価しつつ、今後は近年の直下型地震の丹念な再検証も必要だと強調する。
地震学と社会をつなぐ
東北大の遠田晋次教授(地震地質学)は平成7年に大震災が発生した直後、活断層の研究者として現地調査に赴いた。甚大な被害を目の当たりにし、改めて「重要な研究をしている」との思いを新たにしたという。
その年に、地震の調査研究を一元的に推進して長期評価を行い、社会に発信する政府の「地震調査研究推進本部(地震本部)」が設置された。そして、内陸活断層の長期評価では、まず、マグニチュード(M)7以上の地震を起こすとみられる断層で、発生確率の公表を始めた。
しかし、2000年代に大きな被害を出した内陸直下型の地震は、M7未満の規模や空白域とされた場所など評価対象外の断層で続発した。そこで平成25年に始まったのが、個別の活断層だけでなく周辺の活断層を総合した「地域評価」だ。
28年の熊本地震後には活断層の危険性を分かりやすく伝えるため、発生リスクをランク分け形式で公表。昨年の能登半島地震で関心が高まった海域の活断層も、令和4年に長期評価の公表が始まった。いずれも地震学と社会をつなぐ、大震災以降の大きな変化だ。
最新の知見を活用
一方、この30年で活断層の理解はどれだけ進んだか。遠田教授は「衛星データ利活用などの技術革新もあり、着実に知見は積み重なった」としつつ、現在も十分とはいえないと自戒する。
活断層型の地震は、海溝でのプレート(岩盤)沈み込みに伴う海溝型地震に比べて発生間隔が長い。大地震が起きるとデータの取得が一気に増大して多くの研究論文が出るが、起きなければ理解が大きく進まないのが現状だ。これでは、飛躍的な研究の進展は難しい。
活断層をより深く理解するためには、「阪神大震災も含め、最新の知見を基に、過去の地震に対する科学的解釈を丹念に再検証する必要がある」と遠田教授は強調している。(黒田悠希)
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
『関西は地震が少なかった』は事実?大震災前の"迷信"の根底にあったものとは 近畿には発生確率「Sランク」の活断層地震も 地下に潜む地震リスクの警鐘(3)【阪神・淡路大震災から30年】
MBSニュース / 2025年1月17日 18時5分
-
名古屋の“ど真ん中”にも活断層?「地震起こす可能性」「堀川断層は知らなかった」【阪神・淡路大震災30年】地震への備えは?
CBCテレビ / 2025年1月17日 16時48分
-
安全神話の「誤解」を教訓に 南海トラフ地震に「日常から備えを」 京大防災研・矢守教授
産経ニュース / 2025年1月17日 7時30分
-
昭和49年に神戸の大地震を指摘していた報告書『壊滅的な被害を受けることは間違いない』 地下に潜む地震リスクの警鐘(1) 【阪神・淡路大震災から30年】
MBSニュース / 2025年1月15日 18時7分
-
南海トラフ地震「臨時情報」のお粗末な科学的根拠 責任が及ばないよう対策は自治体や企業に丸投げ
東洋経済オンライン / 2025年1月9日 17時0分
ランキング
-
1「エレベーター止まるか不安で…」大阪のタワマン早朝火災、住民50人超が非常階段で避難
産経ニュース / 2025年1月18日 14時11分
-
2「痴漢に警告」受験期間の卑劣行為に東京都が警戒活動「犯罪行為は100%捕まる」都議が指摘
日刊スポーツ / 2025年1月18日 12時15分
-
3中学校の塀に火炎瓶3本投げつける 男2人を逮捕 現場付近の倉庫からは灯油缶 大阪府警
産経ニュース / 2025年1月18日 11時45分
-
4千葉県旭市の養鶏場で鳥インフルエンザ、48万羽を殺処分へ
読売新聞 / 2025年1月18日 18時0分
-
5札幌の飲食店入るビル、受水槽の水汚染…客や従業員21人からノロウイルス検出
読売新聞 / 2025年1月18日 9時21分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください