「周りに知り合いがいない」仮設住宅で深まる孤独感、被災者の心のケアを
産経ニュース / 2024年7月13日 18時40分
元日の能登半島地震から半年が過ぎたが、被災者は心の傷を抱えたままだ。石川県が1月に開設した電話相談窓口「石川こころのケアセンター」に被災者から寄せられる相談は、当初は身内を亡くした悲しみや避難所生活が続くことへの不安が多かったものの、避難所から仮設住宅への移住が進む中で孤独感を訴えるケースが増えている。県障害保健福祉課は今後、保健師らが仮設住宅などを訪問して相談内容を聞き取る支援にも乗り出す。
センターは地震直後の1月下旬に開設。臨床心理士や保健師、看護師などの資格を持つ職員らが対応し、心身の不調の相談があった場合、必要に応じ医療機関の受診を勧めるなどしている。
2月までは「身内が亡くなって残された。どうしたらいいのか」など遺族の相談が目立っていた。避難所で生活する被災者からは「避難所生活が続き、自宅に戻れるのか不安」「物資の支援が届かない」といった相談も多かったという。
ただ、全国から支援物資も集まり始め、仮設住宅の整備も進み始めた4月ごろからは相談内容が変化。「全壊した家をどう建て直していけばいいのか」「地震の影響で退職した。次の仕事をどう見つければ」といった生活再建に関する相談も相次ぐようになった。
6月末時点で市町が必要としている仮設住宅の74%に当たる計5006戸が完成し、最近では「一人で仮設住宅で生活し、寂しくてたまらない」など孤独感の訴えも増えているという。4月下旬から同県珠洲(すず)市の仮設住宅で一人暮らしを続ける60代女性は「以前なら近所の人に雑談がてら分からないことを聞くことができた。今は知っている人が(周りに)いない」と話す。
地震発生後、被災者の心のケアは全国から支援に駆け付けた災害派遣精神医療チーム「DPAT」が担い、避難所の巡回もしてきたが、DPATの活動は5月末で終了。今後、県障害保健福祉課がセンターの事業を拡充する形で、保健師らによる訪問相談にも乗り出す。同課の担当者は「電話相談だけでなく、直接訪問も活用して治療が必要な被災者を支援したい」としている。(高田和彦)
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