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紀伊半島豪雨被害の十津川村 特産キノコのフェア10年に 祖父の故郷思う美容師の熱意

産経ニュース / 2024年9月4日 13時43分

平成23年の紀伊半島豪雨で甚大な被害を受けた奈良県十津川村を支援しようと、大阪府八尾市の美容師、上垣隆幸さん(60)が始めた同村産食材の応援キャンペーン活動が、今年で10年となった。提供する飲食店は大阪府などの複数店舗に広がり、食べたことが縁で十津川村を訪れる人も出てきた。上垣さんは「継続していくことが大切。十津川の振興にもつながれば」と決意を新たにした。

2日午前、十津川村の熊野川(十津川)の近くで上垣さんは、花束を供えて静かに手を合わせた。紀伊半島豪雨の際に氾濫し、甚大な被害をもたらした川は、穏やかに流れている。「訪れるたびに、災害の爪痕が少しずつ自然に戻っているのを感じる。長い年月が経過したのだなと気付かされる」

昭和28年の紀州大水害で十津川村で祖父を失った。生まれる前のことだったが、祖父についてはよく母親から聞かされていた。村で理容室を営み、面倒見が良くて人を楽しませることが好きだった祖父。水害では他の人を救助している最中で命を落としたという。

それだけに、平成23年の紀伊半島豪雨は、ひとごととは思えなかった。発災数週間後には、いてもたってもいられなくなり、救援物資を運搬するために被災地入り。それまでも墓参りなどで村を訪れていたが、変わり果てた姿に言葉を失った。「飲食店や民家が跡形もなく流され、風景が一変していた」

その一方で、被災地を支援したいとの思いを強くした。「ふとおじいちゃんから『何とかせい』と言われたような気がして、役に立ちたいと思った」と振り返る。

被災地で落語会を開催したり、観光や温泉をPRするチラシを大阪府内の居酒屋に置いてもらう〝ひとり復興キャンペーン〟を展開したりと、さまざまな支援活動を行ってきた。現地の人々と交流する中でやりがいを感じる一方、今ひとつ十津川村について発信しきれていない気がした。

村には、豊かな自然に温泉、豊富な食材などたくさんの魅力がある。そうした魅力をより多くの人に実体験してもらうために思いついたのが、村の名産キノコを仕入れ、飲食店に持ち込むフェアだった。

26年に八尾市内の3店舗で始まったフェアは、奈良県五條市や大阪市平野区の飲食店にも広がり、10年の節目を迎えた現在では、常設メニューとする店舗も出てきた。

八尾市の「焼鶏くだかけ久宝寺店」では現在、村産のエリンギとブナシメジ、ヒラキナメコの3種類をフェア以外でも提供。ポン酢などで味わうエリンギ焼きは肉厚感が際立ち、ブナシメジと鶏モモの塩だれ炒めはブナシメジの香りがモモ肉を引き立てる。ヒラキナメコの冷ややっこはつるんとした食感が特徴だ。

店主の梶谷友哉さん(43)は「料理をきっかけに『十津川村に行ってきた』や『おすすめの場所ある?』などと話題になったりする」と手応えを話す。上垣さんは「生産者や協力してくれる仲間があって実現できた活動。食べて興味を持ってもらい、現地を訪れて、復興してきた十津川村の姿を見てほしい」と呼びかけた。(秋山紀浩)

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