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地下にもう1本の川を 豪雨対策で東京都が事業化検討 地下鉄浸水など被害深刻化

産経ニュース / 2024年9月2日 20時16分

台風や線状降水帯による豪雨で河川の氾濫などが懸念される中、東京都が「地下河川」の建設を計画している。既存の地下調節池を地下水路でつなぎ、東京湾に放流する構想で、大量の雨水をためることなく海に流せるため、激甚化する豪雨災害に対応できる。川に放流する地下河川の整備は大阪府でも進むが、専門家によると、海への大規模な放流は世界でも珍しく、都は慎重に事業化を検討している。

40年前に構想浮上

都が検討する地下河川は、現在運用中の白子川地下調節池(練馬区大泉町~同区高松・3・2キロ)と神田川・環状七号線地下調節池(中野区野方~杉並区和泉・4・5キロ)を結び、さらに設計中の目黒川流域調節池(杉並区~世田谷区)から海まで約15キロの地下河川を整備するものだ。

地下河川で海につなげた場合と、都内20カ所に箱形の地下調節池を新たに設置した場合の被害を検証すると、床上、床下浸水が計987棟に上った令和元年の東日本台風のケースでは、地下河川の方が都内の浸水面積は56%軽減されるという。

地下河川の方が地下調節池を新設した場合よりは用地面積や事業費、工費が低く抑えられるため、都は「効率的かつ効果的な整備手法の一つ」と評価する。

地下河川の構想は、昭和60年に当時の鈴木俊一都知事が、都議会の所信表明演説で打ち出した。都市型水害に対処するため、地下に巨大な調節池を設置すると表明した上で、「将来、区部各河川の地下調節池群を連結させ、放水路として利用する地下河川構想の第一歩となる」と述べた。

その後は景気悪化とともに、大型の公共事業が敬遠され、都議会などでも言及されることはなくなった。ただ、小池百合子知事が令和3年の都議会の所信表明演説で「将来の地下河川化を含めて延伸の検討を進める」と表明。その後も記者会見などで「もう1本地下に川をつなげる」と意欲を見せている。

想定上回る整備必要

近年は都内でも短時間で集中的に雨が降るケースが多い。昨年は大雨警報の発令で都水防本部は8回立ち上げられたが、今年は9月1日時点で倍以上の18回に上る。都の担当者は「年々雨の降り方は激しくなっている」と河川の氾濫を危惧する。

都はこれまで、豪雨対策として、河川を拡大することで流量を増やす▽増水した川の水を調節池で一時的に取水する▽河川や下水道に雨水が流れ込まないように雨水浸透施設を設置-の3つの方法で河川などの整備計画を進めてきた。その際、1時間雨量計75ミリまでの対応を想定していた。

ただ、気候変動を踏まえて昨年12月に改定した東京都豪雨対策基本方針では、目標整備水準の降雨量をこれまでの1・1倍とし、目標降雨を10ミリ引き上げることにした。これまでの想定を上回る整備が必要になるが、都建設局は「基本的には調節池の新設や拡大で対応していく」とするにとどめる。

政策研究大学院大学の知花武佳教授は地下河川について「大量の水を海に流すので、洪水被害を防ぐ効果は大きい。調節池だとためた水を戻すコストもかかる。海までつなぐのは理想だが、これだけの規模のトンネル型の地下河川は世界でも例を聞かない」と指摘する。建設費に加え、用地買収の費用や地権者との交渉なども必要で、事業化にはハードルがあるが、知花氏は「地下調節池を増やすより地下河川にした方が安くて効果があるという声が大きくなれば実現する可能性はある」としている。

都心部で豪雨被害 都営地下鉄駅35年ぶり浸水

東京都心部でも大雨の被害が深刻化しており、特に地下鉄の駅や地下街は浸水被害を受けやすい。台風10号の接近に伴う大雨では大きな被害はなかったものの、都に記録的短時間大雨情報が出された先月21日には、35年ぶりに都営地下鉄の駅の構内まで雨水が浸水するなどの被害が出た。

「急激な雨だったので対応が間に合わなかった」

都営地下鉄の担当者は先月21日に大江戸線国立競技場駅(新宿区)に雨水が流れ込んだ状況について語る。同駅では、地下への出入り口3カ所から雨水が浸水したが、水の流入を防ぐ「止水板」の設置が1カ所しか間に合わなかった。このため、エスカレーター5台が故障するなどの被害が出たという。

都交通局によると、都営地下鉄の駅構内への本格的な浸水は平成元年8月の集中豪雨で浅草線五反田駅(品川区)周辺の川が氾濫し、構内に浸水して以来35年ぶりだった。

東京メトロ市ケ谷駅(千代田・新宿区)でも改札付近で人の膝下までつかる浸水被害があった。出入り口に「止水板」を設置しようとしたが、格納庫の扉が水圧で開かなかったという。南北線麻布十番駅(港区)でも浸水被害があり、同駅では平成16年以来だった。

被害防止に向け、今後、カメラの活用や巡回などで出入口の雨量の監視体制を強化する。(楠城泰介)

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