1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 社会
  4. 社会

「もう30年になるんやね」 小曽根真さんが信じる神戸の街の力

産経ニュース / 2025年1月18日 6時0分

No Name Horsesの新アルバム「Day 1」

世界を舞台に活躍するピアニストの小曽根真さんは神戸に生まれ育った。表現はジャズからクラシックまでジャンルを問わず、繊細さと大胆な躍動感を兼ね備えた音楽性で聴く人を魅了し続けている。その感性の原点は、異文化がぶつかり合うことで新たな文化を生んできた神戸の街にある。「もう30年になるんやね」。阪神大震災から復興を遂げてきた街の強さを信じている。

神戸の街を思って作った曲がある。「ストラッティン・イン・キタノ」。異人館街としても知られる北野を闊歩(かっぽ)している風景だろうか。神戸で愛されてきたジャズの伝統的なスタイル「デキシーランドジャズ」の弾むリズムに、洒脱(しゃだつ)にぶつかる不協和音を乗せた。

「ミックスのイメージなんですよね。あんなにたくさんの宗教の教会や施設がある街、ほかにはない。街全体にいろんな国の文化が存在して、良い意味でぶつかり合って、お互いをリスペクトしあっている。それを受け入れた神戸っ子ってすごくすてきだと思うんです」

さまざまな国にルーツを持つ子供たちと一緒に通ったカトリック系の幼稚園や、学生のころから出入りした国際的な社交場「神戸俱楽部」の雰囲気を懐かしむ。

音楽のある日常

30年前、阪神大震災が起きたときは、ハワイに滞在していた。「日本で大きな地震!」という知人からの電話に驚いてテレビをつけると、米CNNテレビで阪神高速が倒れている映像を流していた。慌てて実家に電話をかけて帰国。被災したFM局「Kiss FM KOBE」に泊まり込んで震災関連情報を流し続けるスタッフの手伝いもした。だが当時、毎週日曜日に放送していた自身の番組「OZMIC NOTES(オズミック・ノーツ)」は1月から2月にかけて休止が続いた。

「音楽のある日常を届けよう」

自粛ムードが続く中、「音楽を流すのはまだ早い」という反対の声を説得して、3月に入って番組を再開した。始まりを知らせるジングルが約1カ月半ぶりに鳴った瞬間、局のファクスからはき出される紙が止まらなくなった。生活情報などを交えつつ、元気になれる曲をかけ続けた2時間。「待ってました」「ありがとう」の声があふれた。

「音楽って不思議な力がある。人と人をつなげるランゲージ(言語)で、人の生き方を豊かにしてくれるんやね」

若いころに神戸を飛び出した。「神戸ってこれほど住みやすい土地はないんですよ。甘えてしまうから、ずっと神戸にはいられないんですよ」と破顔する。その後は世界を飛び回っているが、ジャズピアニストでオルガン奏者だった父親の実さんから神戸で学んだデキシーランドが今も小曽根さんを支えている。

スイングと輝き

最近、自らが率いるビッグバンド「No Name Horses(ノーネームホーセズ)」の結成20周年を記念したオリジナルアルバム「Day 1」を発表した。ここでも原点に立ち戻るかのように、神戸で知ったビッグバンドの王道のスイングと輝きをちりばめている。

「神戸って、誰もやったことがないことをやってきた魅力的な街やと思うんです。ここで生まれる文化を積み上げていけば、自然と多くの人が神戸に集い続ける。そんな街だと思います」。そういって、街のこの先に思いを馳(は)せた。

おぞね・まこと 1961年、神戸市生まれ。83年、米バークリー音大ジャズ作・編曲科を首席で卒業、アルバム「OZONE」で全世界デビュー。以来、ジャズの最前線で活躍している。クラシックにも本格的に取り組み、国内外の主要オーケストラと共演を重ね、高い評価を得ている。平成30(2018)年紫綬褒章受章。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください