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災害ごみ総量244万トン、さらに増加も…能登復興に影 隆起で使用できぬ港なお多数

産経ニュース / 2024年7月1日 7時0分

地震で海底が隆起した黒島漁港。全面復旧には大規模な工事が必要となるため、かなりの時間を要する見通しとなっている=6月19日、石川県輪島市(ドローン使用、甘利慈撮影)

能登半島地震は7月1日で発生から半年。被災地は着実に復興に向かっているが、山積みになった災害ごみの処理や被害が大きかった道路、隆起や津波によって再開のめどが立たない漁港など、復旧の見通しが不透明な課題は多い。地震の規模や人口などに違いがあるため、これまでの大規模災害と単純比較はできないものの、およそ5カ月を要した断水復旧が象徴するように、地域的な特異要因によって遅れが生じる懸念が広がっている。災害大国として多くの犠牲の上で得た教訓や知見を生かした迅速な対応が求められている。

処理完了のめどは2年3カ月

能登半島地震で、主に全半壊した家屋を解体した際に排出される災害ごみの総量推計は244万トンとされている。これは平成28年4月に起きた熊本地震の311万トンに近い。

石川県が2月末に策定した災害ごみの処理実行計画によると、完了のめどは約2年3カ月としており、熊本地震の約2年とほぼ変わらない。

一方、7年の阪神大震災は約1500万トン、23年の東日本大震災は3100万トン(福島県内を除く)で、一概に比較はできない。

だが、災害ごみの総量が能登半島地震の6~10倍以上にもかかわらず、約3年で処理を終えている。これは国の関与や民間の協力、地理的条件などが、処理期間の長短に影響することを表している。

また、熊本地震では処理の過程で、推計よりおよそ100万トン増加しており、能登半島地震においても同様に増える可能性がある。石川県の処理計画においても、全半壊した家屋の解体や運搬などが円滑に進むか見通せないことから、状況に応じた見直しを明記している。

半島西側の多くの漁港は大がかりな工事必要

能登半島の小規模漁港の多くは、地震による隆起などで防波堤の基礎部分がむき出しになったり、海底がせり上がって泊地が干上がったりし、使用できない状態が続いている。

水産庁によると、6月15日現在、石川県が管理する8漁港のうち7漁港が使用不可または一部のみ使用可。市町管理の61漁港については使用不可が11漁港、一部のみ使用可も30漁港にのぼる。全面的に使用不可となっている漁港は、特に隆起が激しかった能登半島西側の珠洲(すず)、輪島両市などに集中している。

比較的規模が大きい港湾では、海底の土砂を取り除く浚渫(しゅんせつ)などを行い、一部では漁業再開のめどが立ち始めているが、半島西側の多くは大がかりな工事が必要だ。

水産庁の担当者は「隆起の程度によっては、停泊場を深さが維持できる位置に変える工事などを検討する」と話し、復旧までに長期間を要する可能性を示唆している。

降雪、地理的課題を踏まえた復興計画を

■名古屋大減災連携研究センター・平山修久(ながひさ)准教授

能登半島地震による道路や電気、水道といったインフラ被害を考えるとき、重要な視点はさまざまな事象が重なり、好ましくない方向に展開してしまう「連滝(れんたき)災害」だったことだ。

地理的に孤立しやすい半島で、しかもその先端だった▽1分弱の間に3回の大きな揺れが起きた▽過疎化や高齢化が進む地域だった▽土砂災害や津波、液状化、地盤変位など複合災害だった-などが復旧を難しくしている。

災害ごみの東日本大震災との違いは、規模が異なるとはいえ、国ではなく自治体が主体で対応に当たっている点。そもそも集積するスペースや廃棄物処理業者、焼却施設などの確保は容易ではなく、想定通りにいかないことが多い。

ボランティアも含めて石川県外からの支援が必要だが、そのために不可欠なのは道路だ。主要道路はおおむね復旧したものの、支援者が宿泊できる地点からのアクセスが悪いこともこれまでの地震とは違う。金沢市から片道4時間かけて被害地域に通い、作業を行うのは現実的ではない。

水道に関しては、従来の被害は地中の配水管だったが、今回は浄水場や水を蓄える配水池といった「上流部分」まで拡大した。前例のない初のケースだけに復旧に時間がかかっている。

一方で日本海側特有の降雪量が多い地域という課題もある。厳冬期に作業を中断する可能性もあり、これらを踏まえた効率的な復興計画が求められるだろう。

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