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ボートでの淀川下り 動画配信の男性が堰で転覆し死亡 知られざる河川施設の事故リスク

産経ニュース / 2024年8月21日 7時0分

夏に増える河川での水難事故。大阪府の淀川では先月、ゴムボートで川下りをしていた男性が、大堰(おおぜき)と呼ばれる高低差のある河川施設を通過する際に川に投げ出され、死亡する事故があった。専門家はこうした河川施設の構造を含め「川の特徴を知ってほしい」と事前のリスク管理の重要性を指摘している。

7月中旬、大阪市東淀川区を流れる淀川で、ゴムボート2隻が転覆した。30~40代の男性3人が川に投げ出され、このうち2人は自力で岸に上がり無事だったが、後日行方不明となった30代男性の遺体が下流で発見された。

事故現場となったのは「淀川大堰」と呼ばれる最大高低差約2メートルの河川施設。男性らは京都府八幡市から動画配信を行いながら淀川を手漕ぎボート2隻で下り、大堰に差しかかった際に水面に投げ出された。大阪府警によると、助かった2人は救命胴衣を着用していたが、亡くなった男性は事故当時、暑さを理由に外していたという。

国土交通省近畿地方整備局淀川河川事務所によると、淀川大堰は上流と下流に高低差を生むことで人工的に流水を制御する可動式の構造。同事務所では、施設保全のため淀川唯一の航行禁止区域を大堰の上流約100メートルと下流約320メートルに設定し、仮に船舶が近づいても一目で分かるよう「船舶接近禁止」と記した看板や標識を設けていた。

事故直前まで配信されていた動画によれば、亡くなった男性は船舶の接近を禁止する表示を認識していたことがうかがえる。「ボートは関係ないんちゃいます?」「段差なんかないやろ」と発言しており、大堰の構造を詳しく理解していなかった可能性がある。

同事務所の担当者は、淀川大堰付近が航行禁止区域であることを改めて強調した上で「川は上流から見ると緩やかに見えるが、場所によっては流れが急になったり、思ったより深かったりする。川を利用する際にはその川の特徴を知ることが大事だ」と話した。

水難学会理事で長岡技術科学大の斎藤秀俊教授は「(川下りの際には)事前に河川事務所に相談するなどして、どこに何があるか把握すべきだ」と指摘。手漕ぎボートには船舶免許が必要なく、法令上救命胴衣の着用も義務づけられていないものの、安全確保のために「川下りをする際には救命胴衣は必ず着用を」と強調する。

昨年3月には京都府亀岡市の保津川で観光客向けの川下り舟が転覆し船頭2人が死亡するなど、プロでも事故を起こすことに触れ、「川下りには相当な知識が必要だ」と注意を呼びかけた。

急な深みや複雑な「循環流」 堰ならではのリスク

国土交通省によると、堰や堤防といった治水・利水目的の河川管理施設は、国管理のものだけで1万851カ所(令和4年末現在)に及ぶ。構造物があることで複雑な流れができたり、急に深くなったりと特有のリスクがあり、水難事故も多発している。

各都道府県が管理する施設や橋脚などを含めると河川上の構造物の数はさらに増える。公益財団法人「河川財団」によると、平成15年から令和5年までに発生した河川での水難事故のうち約16%(580件)が河川構造物付近で起きている。

堰の直下流では循環流が発生し、巻き込まれると脱出が困難になる危険性も。堰での水難事故は河川構造物付近の事故の約3割に上り、特にリスクが高いといえる。

過去には千葉県の利根川にある河口堰付近で、水上バイクが流れにのまれて転覆し、計3人が死亡する事故があった。その後の運輸安全委員会による調査報告書は▽立ち入り禁止区域内には絶対に入らない▽堰の管理者などに状況を確認し注意事項を把握する▽体に合った救命胴衣を着用する-といった再発防止のための教訓に言及している。(木下倫太朗)

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