能登地震半年、断水なお1400戸超「元に戻るのか」 復旧困難地区、住民のストレス蓄積
産経ニュース / 2024年7月1日 12時0分
能登半島地震から半年となった石川県内の被災地は、被害が甚大だった一部地域で今も断水が続いている。土砂崩れや家屋倒壊の影響で復旧の見通しが立たない「早期復旧困難地区」は輪島市と珠洲(すず)市で計1471戸(6月24日時点)。「元の生活に戻れるのか」。まだ周辺に多くのがれきが残る中、住民らは復旧に不安を抱いている。
「水は出ないし、倒壊した家もそのまま。日本の多くの人にこの現状を分かってほしい」。地震と津波で壊滅的な被害を受け、困難地区に指定されている珠洲市宝立町鵜飼の米沢由子さん(86)は訴える。
被災地のほぼ全域で5月末までに断水は解消したが、米沢さん宅の蛇口をひねっても水は出ない。同居する60代の息子が2~3日に1回ほど、近所の学校へ出かけて生活用水をくんでくる。常に節水を心掛けており、手洗いは消毒液で済ませ、歯磨きの際も水は少しずつ使う。用を足す際はトイレに袋を敷いて済ませているという。
地震以降、料理は全くしなくなり、食事はコンビニ弁当などを買うことが多い。「半年間、水を満足に使えない生活は味わったことがない。ストレスがたまって体調も悪化した」と米沢さん。「いつこの町が復興するのか、元の生活に戻れるのか心配」と先の見えない不安を口にする。
大規模な土砂崩れなどの影響で困難地区となっている輪島市の稲舟地区。自宅が全壊した60代女性は「行政や業者も一生懸命やってくれている。今はただ復旧を待つしかない」と話す。45年ほど住んでいた地区を離れ、現在は金沢市の仮設住宅で避難生活を送る。
一面に田んぼや山々の緑豊かな風景が広がり、広大な日本海を望むことができる稲舟地区。女性はつらいときもこの景色を見て癒やされてきたといい、「早く土砂崩れなどが解消して地元に戻りたい」と話した。
県環境政策課などによると、困難地区となっている山間部や海沿いの集落は、土砂崩れなどの影響で工事車両などが入れない状況が続く。水道管の修繕作業や浄水場の被災調査などにも着手できないところもある。
観光名所「輪島朝市」があった輪島市の河井地区の一部も困難地区だ。大規模火災に見舞われた建物が多く残り、水道管の修繕が難しいという。同市の担当者は「街の復興に合わせ、水道も徐々に復旧させるしかない」と述べた。珠洲市の担当者も「公費解体が進んだところから漏水調査などを始める」とした。
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