「予算・人員、とにかく倍増」自治体の防災支援を大幅強化 定員確保には限界も
産経ニュース / 2024年12月20日 20時42分
政府が20日、内閣府防災部門の定員を大幅に拡充する方針を決めた。南海トラフ巨大地震などへの懸念が高まる中、地域防災力の底上げを図る狙いがある。現状では、発災のたびに事前防災の取り組みは中断を迫られ、自治体の支援は必ずしも十分とは言えない。一方で、増員への対応には限界があり、現場からは人材不足を懸念する声が早くも聞こえる。
「次なる大規模災害の発災を見据え、防災立国の構築に向けた取り組みを進める」。坂井学防災担当相は20日の記者会見でこう述べた。
政府関係者は「とにかく予算も人員も『倍増』が目標だ」と明かす。内閣府防災部門の体制は定員110人に加え、自治体からの出向研修員約40人。大規模災害時には全員で災害対策本部の任務に当たる。
この間、事前防災を進める機能は実質的に停止を余儀なくされる。南海トラフ地震を想定した基本計画では、当初3月までに見直す予定だったが、1月の能登半島地震への対応で今も終わっていない。
また、災害対策基本法は市区町村が防災対応の一義的責任を負うとするが、多くの自治体にとって財政的にも人員的にも防災に注ぐ余裕は十分ではない。専門職員も少なく、対応には限界がある。支援する側の都道府県も国と板挟みになり、円滑な連携ができないケースも散見される。
政府は状況を打破するため、部署として最大の50人規模となる地域防災担当を新設し、全都道府県の担当者を置く抜本的拡充に踏み切った。8月に定員要求した段階では17人増だったが、10月に就任した石破茂首相は「自治体によって災害対応に差があってはならない」と繰り返した。
一方、生え抜き職員が少ない内閣府にとって定員は他省庁や自治体、民間企業からの出向や任期付き採用などで賄うしかない。「どの省庁も余裕はない」(政府関係者)中、定数を埋められるかは未知数だ。また、担当職員は2~3年おきに出向元へ戻るため、専門人材の育成には生え抜き職員の必要性を指摘する声もある。
今回は令和8年度の「防災庁」設置に向けた準備段階に過ぎない。ある内閣府幹部は「実際に回せるかはこれからだ」と気を引き締めた。(市岡豊大)
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