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地区ごと「集団移転」を模索する動き広がる 能登地震8カ月、過疎・高齢化で集落維持困難

産経ニュース / 2024年9月1日 18時33分

集団移転の要望書を提出した喜田充さん=8月22日午後、石川県輪島市(吉田智香撮影)

能登半島地震で大きな被害が出た石川県で、自力での住宅再建やコミュニティー維持の難しさを理由に、安全なエリアへの集団移転を模索する動きが出始めている。同県輪島市門前町浦上地区の住民らは8月、地区内での集団移転と、住まいとなる公営住宅の建設を市に要望。集団移転についての住民の意見を取りまとめる動きは他の自治体にも広がりつつある。地震は9月1日、発生から8カ月となった。

輪島市西部の山間部に位置する浦上地区。26の集落が点在し、地震前の人口は235世帯455人だった。地区の中心部にある浦上公民館長の喜田充さん(75)によると、実際に住んでいたのは430人ほど。大半は高齢者で単身世帯も多かった。過疎化と高齢化で住人がわずかとなり、もともと将来の存続が危ぶまれる集落もあったという。

地震では周辺の道路が寸断され、住民が一時孤立。多くの建物が全壊や半壊と判定された。住民が避難するなどして無人になった集落が複数あるほか、輪島市街地につながる国道249号は現在も通行止めが続く。

こうした状況を踏まえ、浦上地区内に完成した仮設住宅で暮らす62世帯を対象にアンケートを実施したところ、回答者の8割弱が災害公営住宅への入居を希望した。災害公営住宅は、災害で住居を失った人たちのために自治体が国の助成を受けて整備する公営住宅で、低い家賃で住むことができる。

区長会長でもある喜田さんらは、地区の中心部に災害公営住宅を集約した「コンパクトで効率的なコミュニティー」の建設を求める要望書をまとめ、8月初めに市役所で坂口茂市長に手渡した。

喜田さんは「仮設住宅には入居期限がある。高齢のため住宅を自力で再建するのが難しい住民がいるし、土砂災害のリスクが高く、住み続けるのが難しい集落もある」と訴える。

集住で効率化

要望を受けた市は集団移転を全面的にバックアップする方針。今月3日開会の市議会に、候補地の測量費用を盛り込んだ補正予算案を提出する。

集落が点在するよりも集まって暮らす方が、水道や道路などの維持費を抑えられる利点がある。東日本大震災の被災地でも、住宅や商業施設をまとめた「コンパクトシティ」が導入された。市の担当者は「持続可能なコンパクトシティの観点からも、まとまって暮らすメリットがある」と話す。

ただ、これまで浦上地区内の集落で、住民の協議で集団移転の意向を固めたのは1カ所に過ぎない。市は住民側に、地区全体で意見をまとめるよう求めている。

津波に恐怖心

一方、能登町東部の沿岸部に位置し、地震前は82世帯195人が居住していた白丸地区。地震では激震だけなく津波も押し寄せ、火災まで発生した。今後も元の場所で暮らし続けることにリスクを感じる住民もいる。

地区の住民で高台への集団移転を検討する委員会を立ち上げ、7月に初会合を開催。移転に関する住民アンケートや意見交換をした上で、結論をまとめることで合意に至った。

津波によって自宅が半壊した区長の山森賢治(まさはる)さん(72)は「高台に移りたい住民には津波への恐怖心がある」と説明。現在はアンケートの集計作業を進めており、「丁寧に意見を聞きつつ、できるだけ早く方向性を決めたい」と話した。(吉田智香)

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