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浜通りを駆け抜けて 直球&曲球 中江有里

産経ニュース / 2024年12月19日 10時0分

中江有里氏=東京都新宿区(宮川浩和撮影)

元日に起きた石川県の能登半島地震に猛暑、大雨と強風をもたらした台風、そして能登を襲った記録的豪雨…。今年も日本は災害続き。南海トラフ地震、首都直下地震など、この先いつ何が起きても不思議じゃない。災害大国に住んでいることを痛感させられた1年だった。

先月、福島県沿岸部の浜通りを訪ねた。いわき市から車で北上し、東京電力福島第1原発の20キロ圏内を走った。10年前、第1原発に足を運んだときは、移動の車中で放射線量計を何度も確かめた。その数字の意味はよくわからなかったが、物々しい空気が漂っていた。行く前から不安で、滞在中はずっと緊張していたことを覚えている。

今回、楢葉町、広野町にまたがるサッカーの聖地と言われるJヴィレッジに立ち寄った。原発事故後は原発へ向かう作業員の着替えや荷物を預ける拠点となっていた。今は福島の復興を象徴する場所にもなっている。穏やかな天候の下、天然芝のピッチにはアスリートたちがいて、思い思いにトレーニングしていた。

川内村でそばを、浪江町ではうどんを食べた。どちらもおいしかった。10年前、Jヴィレッジのレストランでも食事をしたが、緊張のせいで何を食べたか覚えていない。

浜通りを駆け抜けるような2泊3日で、東日本大震災と原発事故が起きた13年前のままの民家もたくさん見かけた。頑丈な鍵で玄関扉を閉じた家々は、時を止めたまま13年前の惨状を物語っていた。建物が解体されても更地のままの場所もあった。

私はまだ能登半島へは足を運べていない。いろんな報道を目にしても、想像するだけでは現地の状況は伝わらない、と福島へ行ってみてつくづく思った。

自然災害はいつやってくるかわからない。年末は大掃除とともに防災グッズの見直しをするのによい機会だ。正月の買い出しも多いだろうから、賞味期限切れの非常食の入れ替えなどをしていくと、いざというときに安心だ。

自分を守る備えこそ、すぐにできる防災だ。

中江有里

なかえ・ゆり 女優・作家・歌手。昭和48年、大阪府出身。徳島県を舞台にした「道草キッチン」(来年秋公開予定)で26年ぶりに映画主演を務める。『万葉と沙羅』(文春文庫)、『愛するということは』(新潮社)など著書多数。文化審議会委員。

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