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輪島朝市の露店商も愛用した甘口しょうゆ 蔵全壊の老舗が出荷再開「今できることを」

産経ニュース / 2024年7月10日 12時50分

甘口しょうゆの出荷を再開した「谷川醸造」の谷川貴昭さん(吉田智香撮影)

能登半島地震で木造の蔵が全壊した石川県輪島市の「谷川醸造」が甘口しょうゆの出荷を再開した。観光名所「輪島朝市」の露店商も干物の味付けに使い、地元の味として親しまれてきたしょうゆ。同業者に製造を委託し、被災前の量には及ばないものの、スーパーなどで販売できるようになった。10日には朝市が同市内の商業施設で出張開催され、4代目社長の谷川貴昭さん(47)は「朝市は大事な観光資源。(地元開催を)前向きに受け止めている」と語るとともに「多くの人に支えられ、今がある。できることに目を向けたい」と力を込めた。

「ないと困る」の声に押され

同社は明治38(1905)年創業。築100年を超えるという蔵は元日の激しい揺れで倒壊し、熟成中だったもろみが入っていた木桶(きおけ)も被害を受けた。6月下旬、敷地内にはボランティアの協力で取り出した10個の木桶のうち一部が並んでいた。

甘さに特徴がある能登のしょうゆ。手掛ける商品は主に2つで、このうち甘口の「サクラ醤油(しょうゆ)」は刺し身をはじめ魚介類と相性が良く、朝市の露店に並ぶ干物などの味付けにも使われていた。

「あのしょうゆがないと困る」。地震後、こうした声に後押しされ、同業者に製造への協力を打診。県内外の2社が引き受けてくれることになり、独自の配合で味付けする甘口しょうゆをレシピ通りに造ってもらった。5月に出荷を再開し、待ちわびていた人から感謝の声が届いた。

現在出荷できる量は被災前の半分程度だが、谷川さんは「食べ慣れた味で地震前の日常を取り戻すような気持ちになってもらえたら」と語る。

再建目指しCF

一方、木桶で熟成させる伝統的な製法にこだわった本醸造の「能登のお醤油」は製造再開のめどが立たない。原材料の大豆、小麦、塩は能登産。木桶や蔵にすみつく微生物の働きによって味わいが決まるが、いずれも使える状態ではない。

蔵の再建を目指し、クラウドファンディング(CF)で支援を呼びかけると1千万円超が寄せられた。並行して収入不足を補うため、知人がデザインしたポーチや手ぬぐいといったオリジナルグッズの販売も始めた。

大豆を蒸す設備がある建物や麴(こうじ)を作る麴室(むろ)には大きな被害はない。被災前のように使えることが確認できれば、みそや甘酒などを造るつもりだ。

その先に見据えるのが本醸造しょうゆの製造再開。今月に入り、徳島県の桶屋に預けていた木桶2個が、傷んだ側面をカットするなど修理されて戻ってきた。「まずは少量からでも仕込みを始めたい」と話す谷川さん。被災後に知り合った人の力も借りつつ、蔵の再建を目指す。(吉田智香)

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