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田んぼダムで浸水被害を防げ 低コストで効果 東日本豪雨で被害の茨城・常総市で研修会

産経ニュース / 2024年6月17日 15時55分

「田んぼダム」の研修会で常総、下妻、八千代3市町の水害リスクについて説明する農林水産省の担当者=茨城県常総市新石下

大雨の際、田んぼに水をためて浸水被害を軽減する「田んぼダム」の研修会が、茨城県常総市新石下の地域交流センターで開かれた。同市は平成27年の東日本豪雨で鬼怒川などが決壊。市の面積の約3分の1が浸水し甚大な被害が発生した。関係者は、温暖化により各地で集中豪雨が頻発する中、有効な水害対策の一つとして田んぼダムを普及させたい考えだ。

雨の流出量を制御

田んぼダムは、小さな穴の開いた調整板や、塩ビ管などを水田の排水口に設置することで降った雨の流出量を抑え、河川の増水を遅らせて下流域の浸水リスクを減らす取り組みだ。費用や時間のかかる河川整備と比べ、安価に設置できるとして国が推奨している。

昨年7月に常総市は隣接する下妻市や八千代町と「災害時における相互協定」を締結。研修会はその一環として3市町が合同で主催した。当日は農業関係者や防災士ら約170人が熱心に耳を傾けた。

研修会では農林水産省の担当者が、田んぼダムの概要や、導入場所では水稲の収量や品質に影響がないこと、助成制度などについて紹介。その中で、3市町の洪水リスクエリアは総面積の約7割に相当する一方、水田は総面積の約3割以上を占めており、「田んぼダムによる洪水の抑制効果が高い」と説明された。

水害防止に効果

茨城県の担当者からは、県内で田んぼダムに取り組んでいる茨城町や笠間市の先進例などが報告され、洪水被害を抑制するだけでなく、排水機場の長寿命化や節電につながるといった効果も紹介された。

さらに、常総市内では鬼怒川の決壊現場に近い三坂地区で、水田の基盤整備をきっかけに令和4、5年で約50ヘクタールの水田に田んぼダムが導入されていることなどが報告された。ホームセンターで1メートルの塩ビ管を購入し、自分で加工すれば製作時間約30分、費用は200円程度で装置は完成。1本の塩ビ管で最大5本作れるという。

参加した防災士の女性は「田んぼダムをよく知らなかったが、水害を防ぐため有効と感じた。もっと、広く市民に知ってほしい」と話す。

平成27年の水害で自宅に被害を受けたという常総市の農家の男性(75)は「自分の水田が防災に大きな役割を果たすと知った。導入を検討したい」と前向きだ。一方で下妻市の農家の男性(68)は「塩ビ管の価格は安くても、畔(あぜ)(水田と水田との間に土を盛り上げてつくった小さな堤)をかさ上げし、強化するのは負担が大きい。助成額を増やして個人負担がゼロになればもっと普及すると思う」との声もあった。

常総市の神達岳志市長は「防災の手段の一つとして、農業関係者と連携し、少しでも川や内水の氾濫を食い止めたい」と言葉に力を込めた。

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