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能登のトキ放鳥「復興のシンボル」に 放鳥計画実現へ、被災乗り越え環境づくり

産経ニュース / 2024年7月6日 10時13分

本州で最後にトキが捕獲された場所に作ったビオトープで話す「能登トキファンクラブ」会長の宮下源一郎さん=石川県穴水町

半年前の地震で甚大な被害を受けた石川県の能登半島は、国の特別天然記念物・トキが本州最後に捕獲された地だ。トキの保護繁殖に取り組む環境省から放鳥候補地に選定され、早ければ令和8年度の放鳥に向け機運が高まっていた中で起きた地震。地元関係者は未曾有の被害にも諦めず環境保全などを進めている。

候補地に選出

トキは学名「ニッポニア・ニッポン」で、日本を象徴する鳥。主に水辺や湿地でドジョウや小さな昆虫などを食べるが、乱獲や農薬による環境破壊などで減少した。昭和45年に同県穴水町で本州最後の野生トキ「能里(のり)」が捕獲され、56年に野生が絶滅。平成15年には日本産が絶滅した。その前に中国産による人工繁殖には成功し、20年に初めて新潟県佐渡市で野生下に放鳥された。

環境省は佐渡以外での定着に向け令和4年5月、放鳥候補地となる自治体の公募を開始。同年8月、島根県出雲市とともに石川県と能登半島地域9市町が選定された。

県のトキ放鳥推進モデル地区に指定される珠洲(すず)市三崎町の粟津(あわづ)地区には、約10年前から佐渡で放鳥されたトキが飛来。餌場になる田んぼの生物多様性を守ろうと、農薬の使用量を減らすなどの取り組みを進めてきた。

しかし、地震で道に亀裂が入り、水を供給するパイプラインは約60カ所が破裂。粟津村おこし推進協議会長の干谷(ほしや)健一さん(57)は「米づくりをする人が減ってはいたが、地震の被害でさらに農業ができなくなった人もいる」とつぶやく。

地区には市議の菊谷正好さん(74)が過去に飛来したトキを撮影した写真をあしらった看板が立つ。「トキが舞う能登の里粟津へ」と記された思いは被災しても変わらない。菊谷さんは「何とかトキの放鳥に向け、少人数ながらも頑張っていきたい」と話した。

推進予算も計上

石川県の馳浩知事は2月の県の復旧・復興本部会議で能登復興に向けたブランド強化策として「トキ放鳥」に言及。県が6月に策定した創造的復興プランでも、取り組みの一つに「トキが舞う能登の実現」を挙げた。

県自然環境課トキ共生推進室の山田寛司室長は、地震後に各市町の担当者やモデル地区に聞き取りをしたところ、「トキを復興のシンボルにしたいという強い思いが聞けた」と説明。6月に成立した県の補正予算でも放鳥推進関連費が盛り込まれており、「まず復旧に尽力したいが、放鳥が復興のシンボルになるよう取り組みたい」と意気込む。

民間団体も被災を乗り越え、動き出している。能里が捕獲された穴水町で放鳥の機運醸成に取り組むボランティア団体「能登トキファンクラブ」会長、宮下源一郎さん(76)は、紙粘土などでゆるキャラ人形「ニッポニア・トキ次郎」を制作。まだ町内には倒壊家屋も残っているが、今後は人形を町内各所に設置して地元住民たちを元気づけたいとしている。

能里が捕獲された場所に作ったビオトープ(生息空間)も近くの斜面が崩れ、木が倒れかかってくるなどの被害を受けたが、宮下さんは「少しずつ気持ちが前向きになるよう活動していきたい」と力強く語った。(前原彩希)

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