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世界で最も愛された指揮者、アングラ演劇の旗手 今年亡くなった方々に思いをはせて(上)

産経ニュース / 2024年12月31日 9時0分

キダ・タローさん

令和6(2024)年も人々の記憶に残り続ける多くの著名人がこの世を去った。論壇、学術研究で打ち立てた功績は輝き、演技や音楽、スポーツなどでもたらした感動はいまも色あせない。それぞれの面影に思いをはせ、年末を迎える。(年齢の次は死去または死亡確認の月日。芸名などの人は本名略)

三笠宮崇仁(たかひと)親王妃百合子殿下(101歳、11・15)は、昭和16年の結婚以来、三笠宮家を支え、歴史学者の道を歩んだ三笠宮さまのよき理解者として内助の功を発揮された。寬仁親王殿下、桂宮宜仁親王殿下、高円宮憲仁親王殿下、甯子(やすこ)さん(近衛忠煇(ただてる)夫人)、容子(まさこ)さん(千宗室(そうしつ)夫人)の3男2女をご出産。三笠宮さまとともに国際親善に努められ、母子の心身の健康を守る活動にも尽力された。

世界で最も愛され、尊敬された指揮者の一人が小澤征爾さん(88歳、2・6)だった。戦後まもない日本でクラシック音楽の基礎を学び、20代前半で欧州に渡ると才能を開花させ、米ボストン交響楽団やウィーン国立歌劇場の音楽監督を務め、希代のマエストロとして活躍。高松宮殿下記念世界文化賞も受賞し、最晩年までベルリン・フィルなど世界各地の一流交響楽団を指揮して、音楽の神髄を体現した。

戦後を代表する詩人…文化分野

著名人のポートレートを手掛けた写真家の篠山紀信さん(83歳、1・4)は、アイドルから市井の女性までを撮る「激写」シリーズが流行語になった。

日本初のブライダルファッションデザイナーとして活躍した桂由美さん(94歳、4・26)は、戦後日本の婚礼衣装にドレススタイルを普及させた。

アングラ演劇の旗手として知られた劇作家の唐十郎さん(84歳、5・4)は、「状況劇場」を結成して既成の演劇に反旗を翻し、若者の支持を集めた。

作曲家のキダ・タローさん(93歳、5・14)は、番組テーマ曲やCMソングなど多くの作編曲に携わり、「浪花のモーツァルト」の異名をとった。

高松宮殿下記念世界文化賞を受賞した建築家の槇文彦さん(95歳、6・6)は幕張メッセなどの建築で知られ、世界貿易センタービル跡地に超高層建築を設計した。

戦後を代表する詩人の新川和江さん(95歳、8・10)は「わたしを束ねないで」などの作品で知られ、本紙「朝の詩」の選者を36年間務めた。

ファッション評論家のピーコさん(79歳、9・3)は、有名人や街角の人々の服装に辛口のアドバイスを送る「ファッションチェック」が話題となった。

イラストレーターの山藤章二さん(87歳、9・30)は政治家や芸能人の風刺似顔絵が親しまれ、夕刊フジでエッセーのイラストを手掛けた。

料理研究家の服部幸應さん(78歳、10・4)は服部栄養専門学校の校長を務め、「料理の鉄人」など多くのテレビ番組にも出演。食育の推進に努めた。

西洋美術史研究の第一人者で美術評論家の高階秀爾さん(92歳、10・17)は、テレビの美術番組でも活躍し、「名画を見る眼」など多数の著書を残した。

漫画家の楳図かずおさん(88歳、10・28)は恐怖漫画の第一人者。「漂流教室」や、「グワシ」のサインが大流行した「まことちゃん」などで知られた。

詩人の谷川俊太郎さん(92歳、11・13)は、リズミカルで透明感のある日常語でつづられた詩が広く愛唱され、作詞、翻訳など幅広い分野で活躍した。

米ニューヨーク近代美術館(MoMA)新館など美術館や博物館を多く手掛けた建築家の谷口吉生さん(87歳、12・16)は世界文化賞を受賞した。

彫刻家の舟越桂さん(72歳、3・29)は具象彫刻の第一人者として国内外で高く評価。作家の宗田理さん(95歳、4・8)は小説「ぼくらの七日間戦争」が支持を集めた。

フジコ・ヘミングさん(92歳、4・21)は「魂のピアニスト」と呼ばれた。手足が不自由な星野富弘さん(78歳、4・28)は口にくわえた筆で詩や絵画を創作した。

脚本家の小山内美江子さん(94歳、5・2)は「3年B組金八先生」を手掛け、詩人の白石かずこさん(93歳、6・14)は国際的に活躍。作家の梁石日さん(87歳、6・29)は「血と骨」などの小説で知られた。

著述家の松岡正剛さん(80歳、8・12)は「編集工学」を提唱した。ノンフィクション作家の石川好さん(77歳、8・19)は米国の農地での体験記「ストロベリー・ロード」が有名。写真家の細江英公さん(91歳、9・16)は三島由紀夫氏を写した「薔薇刑」を手掛けた。

サンケイ児童出版文化賞受賞者で児童文学作家の中川李枝子さん(89歳、10・14)の絵本「ぐりとぐら」シリーズは幅広く愛された。絵本作家のせなけいこさん(92歳、10・23)は絵本「ねないこ だれだ」で同賞。日本画家の上村淳之さん(91歳、11・1)は花鳥画の第一人者で文化勲章を受章した。

政界にも影響力…社会・学術分野

読売新聞グループ本社代表取締役主筆の渡辺恒雄さん(98歳、12・19)は中曽根康弘氏や安倍晋三氏ら歴代首相と交流を深め、政界に影響力を持った。活字文化への思いが強く、平成11年には経営難だった老舗出版、中央公論社(現中央公論新社)を傘下に。プロ野球巨人のオーナーも務め、プロ野球界を巡る発言が注目を集めた。

東京農工大特別栄誉教授の遠藤章さん(90歳、6・5)は、血液中のコレステロール量を下げる「奇跡の薬」と称された「スタチン」を開発した。

歴史学者で東京大名誉教授の伊藤隆さん(91歳、8・19)は、政治家や軍人の日記などを発掘し、昭和戦前期の政治史研究をリードした。

西嶋勝彦さん(82歳、1・7)は一家4人殺人事件で再審無罪となった袴田巌さんの弁護団長。赤堀政夫さん(94歳、2・22)は、女児殺害の「島田事件」で死刑確定後、再審で無罪となった。

女性史研究家、もろさわようこさん(99歳、2・29)はフェミニズムや人権運動に影響を与えた。マグロ漁船「第五福竜丸」元船長の筒井久吉さん(92歳、6・4)は、米国の水爆実験で被曝(ひばく)。鍼灸(しんきゅう)師の田中美津さん(81歳、8・7)は女性解放運動「ウーマンリブ」を牽引(けんいん)した。

元東京地検特捜部検事の堀田力さん(90歳、11・24)はロッキード事件で捜査の中核を担った。国際政治学で業績を残した東京大名誉教授の猪口孝さん(80歳)は11月27日の自宅火災で死去。産経新聞元特別記者・論説委員の石井英夫さん(91歳、12・18)は長年、産経新聞の1面コラム「産経抄」を担当した。文化人類学者の川田順造さん(90歳、12・20)は文化勲章を受章した。

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