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「何年も人殺し扱い」肩震わせ鼻すする音も 無罪判決に紀州のドンファン元妻

産経ニュース / 2024年12月12日 15時7分

無罪判決を聞く須藤早貴被告(イラスト・山川昂)

「紀州のドン・ファン」と呼ばれた和歌山県田辺市の資産家、野崎幸助さん=当時(77)=に覚醒剤を飲ませて殺害したとして殺人罪などに問われ、和歌山地裁で12日に無罪を言い渡された元妻の須藤早貴被告(28)。法廷で「何年も人殺し扱い」と自身の境遇を嘆いていたこともあり、肩を震わせながら判決を聞き、鼻をすする音もわずかに法廷に響いた。

元妻は上下黒色のスーツ姿に白のマスクを着用して出廷。これまでの公判では黒髪のストレートだったが、この日は髪を巻いている状態だった。

福島恵子裁判長は判決理由で、「野崎さんが覚醒剤を摂取したとされる時間帯には幅があり、(元妻が)飲ませたかどうかを推認することはできない。誤って野崎さんが過剰摂取した可能性はないと言い切れない」と述べた。

元妻は初公判で「私は殺していません」と全面的に否認。被告人質問では、野崎さんの死亡前月に薬物の密売人と接触したと認めつつ、「野崎さんから覚醒剤の購入を依頼された」とし、自殺や誤飲の可能性に言及していた。

検察側は論告で、元妻は「老人 完全犯罪」などと検索していた上、野崎さんが覚醒剤を摂取したとされる3時間余りは自宅に2人きりだったと指摘していた。野崎さんは死んだ愛犬のお別れ会を死亡翌月に予定し、現場周辺で覚醒剤の容器なども見つかっておらず、自殺や誤飲の可能性を否定。「離婚の可能性が高まる中、完全犯罪で遺産を手に入れようとした」として無期懲役を求刑していた。

これに対し弁護側は「薄い灰色を何回塗り重ねても黒にはならない」との例えを出し、証拠の不十分さを強調した。

検索履歴は、元妻の趣味から猟奇的な事件を調べたに過ぎないと反論。仮にカプセルで致死量の覚醒剤を飲ませようとすれば最大で約30個必要で「本人の意思に反して摂取させるのは極めて困難」と事件性に懐疑的な見方を示していた。

死亡の約10日前には一緒に旅行し、離婚の現実味を示す証拠もないと指摘。結婚の条件である月100万円の支払いも滞っておらず、「目先の利益派」を公言する元妻が殺害を計画するメリットはないと訴えていた。

元妻は9月、別の男性から現金約3千万円をだまし取ったとする詐欺罪で懲役3年6月の実刑判決を言い渡され、確定している。

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