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130件のセクハラ、パワハラ認定 社福法人「グロー」訴訟判決で分かった違法行為の全貌

産経ニュース / 2024年11月7日 13時30分

署名を手渡す「社会福祉法人グローにおける性加害問題を考える会・滋賀」のメンバー(中央)ら=1日、滋賀県近江八幡市のグロー

障害者の文化芸術活動推進に取り組む社会福祉法人「グロー」(滋賀県近江八幡市)の前理事長、北岡賢剛氏(66)。かつて厚生労働省社会保障審議会障害者部会委員や内閣府障害者政策委員会委員も務め、障害者福祉業界では広く知られる人物だ。その北岡氏から性暴力やセクハラ、パワハラを繰り返し受けたとして、元職員の女性2人が北岡氏とグローを相手取って計5254万円の損害賠償を求めた訴訟で、東京地裁(野口宣大(のぶひろ)裁判長)は10月24日、北岡氏とグローに慰謝料など計660万円を支払うよう命じた。詳報する。

「性欲実現のため」

「約130のセクハラ、性暴力。だいたい、重要なところは認められている」

判決後、記者会見した原告側の笹本潤弁護士が評価したように、北岡氏の長期に及ぶ2人の原告への行為は、裁判所によって「性的欲求を実現させるため」の行為と認められ、「人格的利益を違法に侵害する不法行為」と断罪された。

判決によると、北岡氏は原告の木村倫さん(仮名)に対し、平成24年8月ごろから、「抱きしめたい」などと記したメールを送信するようになり、その後、常態化。さらに、約7年の長期間にわたり、タクシー内で尻を触るなどの不法行為を繰り返した。

原告の鈴木朝子さん(同)に対しても、「好きです」といったメールを送信したほか、26年11月と27年6月ごろには、ホテル内で性加害行為に及んだ。

時効「3年」の壁

ただ、鈴木さんへの最後の行為は27年6月ごろ。提訴時までに3年の消滅時効が完成しているとして、北岡氏への請求は認められなかった。一方で、鈴木さんについては、使用者のグローに対し、安全配慮義務違反があったとして、440万円の賠償を命じた。

判決後、木村さんは消滅時効の壁について「なぜ性暴力やハラスメント被害のように時間を要する問題に対して、消滅時効3年の枠内で戦わなければならない仕組みになっているのか」と疑問を呈した。そのうえで「被害者は、被害から逃れ、自分を守るだけで精いっぱい。被害を訴えるには時間がかかる場合が多い。時効の壁が性暴力やハラスメントの実情にそぐわないことを、この裁判を通じて痛感した」とし、現実に即した法整備や制度が議論されるべきだと訴えた。

安すぎる慰謝料

北岡氏の行為を違法とし、約130のセクハラ、パワハラ、性加害行為も事実認定したにも関わらず、裁判所の金銭的評価は計660万円だった。請求額計5254万円と比較し、あまりにも開きが大きい。

判決後に会見した原告側の角田(つのだ)由紀子弁護士は「『人格的利益を違法に侵害した』と認めながら、慰謝料が安すぎる」と強い不満を表明。「『人格的利益』が大事なものと認識されていない。男性の発想でしかなく、考え直してほしい。この慰謝料ではまったく制裁にならない。日本の裁判所はゆるやかな認定しかできず、不十分。もう少し、裁判所はまじめに考えてほしい」と批判した。

「控訴せず謝罪を」

東京地裁の判決を受け、グローの牛谷正人理事長は、ホームページ上で、北岡氏の行為について「社会福祉法人の理事長としての自覚と責任を欠いた極めて不適切な行為が含まれていた」と批判。その上で、弁護士や有識者らで構成する外部評価の整備など法人運営の健全化を図るとした。

一方、市民団体「社会福祉法人グローにおける性加害問題を考える会・滋賀」は1日、グローを訪れ、賛同者から集めた1万5990筆分の署名を手渡すとともに、「控訴をせず、速やかに責任を認めて原告に謝罪するように」と要求した。

また、同会は県に対し、グローを県立施設の指定管理者に選定し、女性活躍推進企業に認定してきたことを猛省し、女性活躍推進企業認定については直ちに取り消すことを求めている。(野瀬吉信)

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