「違憲」の旧優生保護法、「優生学」や産児制限背景に成立 平成に入ってなくなる
産経ニュース / 2024年7月3日 16時52分
不良な子孫の出生を防止する-。そんな政策を具現化した旧優生保護法は、優良な遺伝形質を残すことで人々を向上させるとする「優生学」を背景に、欧米各国で19世紀末以降に実施された断種政策に連なるものだった。人口増加問題への対応もあり、こうした優生規定は戦後も温存され、なくなったのは平成に入ってから。あまりに遅すぎた改正だった。
令和5年の国会の調査報告書によると、優生学は19世紀後半、進化論で知られるダーウィンのいとこにあたる英国の学者ゴルトンが「血統を改良する科学」として創始した。進化論を背景に各国に拡大し、20世紀初頭には、米国やドイツ、スウェーデンなどで公衆衛生向上と並行した国力増強策の一環として、知的障害者らの生殖能力をなくす政策が進められた。
日本では明治末に「人種改良論」として優生学が紹介されて流行。大正に入ると、物価高によるコメ騒動以降、食糧難を受けた人口抑制や産児制限への関心も高まり、国家が出生に関わる土壌が準備された。
大正4(1915)年にはハンセン病患者への不妊手術が始まる。昭和13年、厚生省に優生課が設置。15年には任意や強制の不妊手術を認める国民優生法が成立した。
戦後も、復員やベビーブームにより人口は急増した。戦地での旧ソ連軍兵士の暴行による妊娠の闇堕胎問題もあり人工妊娠中絶の整備が求められ、23年、母体保護も目的に加えた旧優生保護法が制定された。
旧法に基づく不妊手術は全国で2万4993件。65%は本人の同意がなかった。国が都道府県に、盲腸などと偽ってでも手術を増やすよう求めたことも判明している。
異常さが国会で問題視され、優生関連条項が削除されたのは成立から半世紀が過ぎた平成8年。被害者に一時金を支給する特別法成立は、元号が変わる直前の平成31年4月になってからだった。(荒船清太)
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