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「最重点項目」トクリュウ対策、検察も本腰 警察との「温度差」乗り越えられるか

産経ニュース / 2024年12月17日 8時0分

「ルフィ」などと名乗る広域強盗事件をきっかけに注目を集め、社会の脅威となっている「匿名・流動型犯罪グループ」(トクリュウ)。壊滅に向け、警察だけでなく検察も本腰を入れ始めている。トップの畝本直美検事総長も就任会見で対策強化を明言したが、最前線で捜査に当たる警察内部からは「温度差がある」との声も漏れる。新型の犯罪組織を一掃するため、警察捜査を指揮する検察の本気度が問われている。

首相も言及

「闇バイトによる強盗、詐欺を許してはならない」「事件の主体となっている匿名・流動型犯罪グループの検挙を徹底するための取り組みを一層推進する」

石破茂首相は11月29日、衆院本会議の所信表明演説で、こう宣言した。組織犯罪対策について首相が言及するのは、極めて異例だ。

トクリュウは、相次ぐ暴力団対策法の改正と全国で整備された暴力団排除条例により既存の暴力団が衰退する中、SNS(交流サイト)などのIT技術の発展による「犯罪の匿名化」を背景に誕生した。

親分-子分など「疑似家族」的な関係を構築し、組織に忠誠を誓わせる暴力団とは異なり、帰属意識が薄く離合集散を繰り返す新手の犯罪組織として急激に台頭。SNSで募集する「闇バイト」による強盗事件などが、典型的な犯罪とされる。

ある法務省関係者は「公の場で首相が発言した以上、トクリュウ対策は国家の方針。検察にとって最重点項目になったと言っていい」と打ち明ける。

幹部の決意

首相の発言以前から、今年に入り法務・検察幹部も相次いでトクリュウ対策の強化を「発信」し始めていた。

畝本検事総長は、7月9日の就任会見で「犯罪の組織化や匿名化が進んでおり、立証がますます困難になっている」と指摘。「組織全体として捜査能力の向上に取り組む」とし、トクリュウ対策の強化を明言した。

同月、組織犯罪を所管する最高検公安部長から九州8県を管内に持つ福岡高検検事長に転じた松本裕氏も、着任会見でトクリュウについて「各県、国内にとどまらず、警察との協力はもちろん海外に対しての捜査共助なども積極的に展開する姿勢が必要」とした。

11月に就任した鈴木馨祐法相も、検察内の全国会議で「トクリュウ」に言及したという。

不起訴のケースも

一方、ある警察幹部は、トクリュウ対策について「検察とは温度差がある」と不満げに語る。

トクリュウのような組織犯罪では、実行役や周辺にいるサポート役などは、犯行の全容を知らされていないことも多い。せっかく警察が逮捕しても、証拠が足りず「公判が維持できない(有罪にできない)」と検察が判断し、不起訴となることが往々にしてある。

広島市西区で5月に発生したトクリュウによるとみられる強盗事件で、県警は18~19歳の男5人について、実行犯の犯行を幇助(ほうじょ)した疑いで書類送検。だが広島地検は最終的に不起訴処分とした。

警察幹部は「検察に『十分な証拠がない』と判断させた捜査には反省点もある」とした上で、「検察と警察は、治安を担う車の両輪。脅威を増すトクリュウに対しては、われわれ以上に厳しい姿勢で臨んでほしい」と話す。

11月末には、空き巣専門の窃盗団やSNSを悪用した覚醒剤密売グループのリーダーがそれぞれ警視庁と福井県警に相次いで逮捕されるなど、警察の捜査はトクリュウの「上層」にも及ぶようになってきている。

警察幹部は「首謀者たちが逮捕されても、あっさりと釈放される事態は絶対に避けたい。検察と警察の連携強化はまさに時代の要請といえる」と力を込める。

カギは「司法取引」

トクリュウ対策で注目されるのが、他人の犯罪を明らかにした見返りに刑罰を軽くする「日本版司法取引」(協議・合意制度)の活用だ。

平成30年6月から導入されたこの制度の対象となるのは、振り込め詐欺、薬物密売などの組織犯罪。容疑者や被告が供述したり、証拠を提供したりして共犯者らの犯罪を明らかにした場合、検察官が起訴を見送ったり求刑を軽くしたりする。

検察庁勤務の経験がある弁護士は「これまでは自白させることが捜査の中心だったが、自白を得ようとするあまり、強引な取り調べで冤罪(えんざい)を生む問題があった」と指摘。

その上で「組織犯罪の悪しきトレンドと化したトクリュウの壊滅に向け、合意制度という切り札を手にした検察の本気度が問われている」と、制度の活用に期待を寄せた。

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