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「土地の迷子」問題解消に数十年? 相続登記、昨年4月に義務化で増加も効果は限定的

産経ニュース / 2025年2月3日 17時48分

関西学院大法学部の岡田博史教授

登記がされないまま相続が繰り返されて土地の所有者が分からなくなる「土地の迷子」問題が長期化している。昨年4月に始まった不動産の相続登記義務化を受け、相続登記は前年度に比べて14%増加したものの、所有者が分からない土地は九州本土を上回る面積があるとされる。法務省関係者は「このままでは問題解消まで数十年かかる」と天を仰ぐ。

相続を繰り返すうちに土地の所有者が分からなくなる問題は平成23年の東日本大震災を機に表面化した。被災した沿岸部からの移転先にしたい土地の所有者が分からず、取得が難航し、政府が対策に本腰を入れ始めた。

10万円以下の過料も

相続登記義務化は昨年4月に開始。相続を知ってから3年以内に登記しないと10万円以下の過料が科される。義務化前に相続した土地も令和9年3月末までに登記しなければ、過料対象になる。

法務省によると、相続や遺言での遺贈などによる登記件数の増加率は、3年度は前年度比8%増(123万6875件)。4年度は同10%増(136万1757件)、5年度も同10%増(150万2709件)で6年度は9月までの上半期で前年同期比14%増(79万1644件)だった。

一方、国税庁の調査によると、11月からの1年間で相続税を納めた相続人は、3年分が前年比11・2%増、4年分が同12%増、5年分が同2・9%増と、相続件数自体も増加している。

民間調査では、所有者の不明な土地は平成28年時点で推計で九州本土の面積を上回る約410万ヘクタールに上る。放置すれば2040年(令和22年)には約720万ヘクタールとなり、北海道に迫ると試算されており、法務省関係者は「このままでは問題解消は程遠い」と話す。

免税、国庫返納…

政府は相続登記の義務化以外にも、さまざまな問題解消策を打ってきたが、決め手には欠く。

平成30年4月からは、相続登記の際に支払う登録免許税の免除措置を始めた。対象範囲の拡大をしながら延長が続き、現在は100万円以下の土地を相続する際の登録免許税は免除している。

令和5年4月からは、相続した不動産を国庫に引き渡せる制度や、所有者不明の土地や建物を管理する管理人を裁判所が選任できる制度が始まった。

広報活動にも注力してきた。だが、昨年9月に法務省が不動産所有者らに実施した調査では、相続により不動産の取得を知ってから3年以内の登記が必要だとする規定について、認知度は4割程度にとどまっている。

登記にメリットを

元京都市職員で、土地問題などに詳しい関西学院大法学部の岡田博史教授(行政法)は相続登記の義務化による所有者不明土地問題解決の効果は「限定的だ」とする。

相続登記義務化の対象になるのは、あくまで相続の対象になったと「知った」人。「知らないまま」なら対象外だ。長年、登記が放置されている土地では、相当数の相続人が相続したとは知らないまま。義務化の対象にはならず、登記はされないままになる。

岡田教授は「現行制度の更なる見直しが必要だ」と指摘。相続を知った人が法務局に申告して一定期間が経過すれば、他に相続したと知らない相続人がいても、申告した人だけで登記を認める仕組みの創設などを例として挙げている。(宮野佳幸)

土地の迷子問題

登記簿上、所有者が分からないか、判明しても連絡が取れない土地を巡る問題。平成23年3月の東日本大震災で、被災者の移転先の用地取得が所有者が不明なために難航し、復旧・復興を妨げた。「所有者不明土地問題研究会」が平成29年にまとめた試算では2040年(令和22年)までの経済的損失は約6兆円相当。問題解消のため、政府は相続登記の義務化を令和6年4月に始めるなど、対策を打ち始めている。

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